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トルシエが彼らをC代表と呼ぶ理由。
「コパの意義は個人の成長と選別」 

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田村修一

田村修一Shuichi Tamura

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photograph byKoji Watanabe/Getty Images

posted2019/06/17 18:00

トルシエが彼らをC代表と呼ぶ理由。「コパの意義は個人の成長と選別」<Number Web> photograph by Koji Watanabe/Getty Images

ブラジル・サンパウロ入りした日本代表選手たちの練習風景。初戦の相手チリは、FIFAランク16位(日本は28位)。

「この大会は五輪代表にとってレベルが高すぎる」

――今回、そこはちょっと違います。

「実質的に五輪世代のチームで、私の場合とは逆にコパが東京五輪のためのステップとなるのは明らかだ。ただ、五輪代表の主力が加わっているわけでもない。その点はどうなのか?」

――主力のすべてというわけではないですが……。

「80%程度なのか?」

――五輪代表自体がまだ厳密に固定されていませんが、主力とみられる選手たちの多くが入っています。

「コパ・アメリカに行く選手たちが五輪でも代表になるわけだ。経験になるのは間違いないが、試合が厳しいのも間違いない。

 私にすればコパ・アメリカは日本にとって意味のある大会とは思えない。五輪代表にとってもそうで、彼らにはレベルが高すぎるからだ。だからピッチ上の結果は期待できないし、試合を通じて選手が個々に経験を得ることのみが唯一のメリットだ。

 Jリーグとは利益がぶつかり、リーグは中断することなく続いている。コパ・アメリカという大会に対する敬意を日本は欠いているのではないか。コパは歴史と権威のある大会で、参加することで日本代表のイメージを高めることができる。日本だけではないアジアのイメージもだ。

 だから結果を求めて最善の努力をすべきだが、同時に遠く離れた南米の大会でもあり、利益や目的を設定しにくいのも事実だ。つまり葛藤が生じやすい大会であるということだ。

 五輪にとって意義があるのは間違いないが、結果に関してはちょっと微妙だ。日本が1勝をあげるのすら難しいし、悪い印象を与える可能性を否定できない。日本国内にもインパクトを与えられないだろうし、大きなメリットがないように私には見える。時期が悪いしモチベーションも持ちにくい。参加する意義を見出すのは難しい」

「日本がブラジルに送るのは実質的なC代表だ」

――アジアチャンピオンとして参加するカタールは、3年後のワールドカップに向けての準備としての明確な目的があります。日本とは状況が異なるわけですね。

「カタールはこの大会を有効に活用できる。彼らはアジアチャンピオンであり、アジアのいいイメージを与えることができる。

 政治的なモチベーションを彼らは持っている。しかも若いチームだから、経験を豊かにするためにこうした大会は必要だ。カタールはコパにA代表を送り込む。彼らにはコパ・アメリカはとても有益だ。

 日本は違う。

 A代表での参加は見送った。日本がブラジルに送るのは実質的なC代表だ。ただ、このC代表は、五輪代表としてのポテンシャルを持っている。だから選手個々の経験にはなるが、コレクティブな成果はほとんど期待できない、ということになるだろう」

【次ページ】 「カタールの戦略は理にかなっている」

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