太田雄貴のEnjoy FencingBACK NUMBER
【NSBC第3期 スペシャルトーク】
太田雄貴×島田社長、特別対談後編。
革新を生むことでスポーツが変わる。
text by
太田雄貴Yuki Ota
photograph byMasao Kato/AFLO
posted2019/06/14 08:05
1万人以上の観客を横浜アリーナに集めた2018-19シーズンのBリーグファイナル。新時代のスポーツビジネスの筆頭格だ。
英語の成績が問われる代表選考。
太田 選手は大卒が基本ですか?
島田 高卒でプロになっている選手はほぼ皆無ですね。高校卒業の段階ではまだまだ選手として発展途上だからだと思います。よほどの逸材でなければ厳しいでしょう。試合に出られず数年控えで過ごすのなら、大学で実戦経験を積んだ方がいい、という考え方もあります。
本来であれば高校卒業後プロ入りし、長きに渡って稼げる方が選手にとってはベストで、実際にそういう選手もいます。ただ、バスケ界はまだまだ未成熟な部分もあって、万が一のことを考えると、大学に行って他の選択肢を持てるようにしておいたほうがいいのも事実です。
フェンシング協会の大きなニュースといえば、先日世界選手権の日本代表選考基準として、英語の試験成績を導入すると発表しましたよね。
太田 フェンシングは電気が付いたら勝ちだとみんな思っていますが、実際はそうではなく、審判機がどちらに動いたかというのを審判が見てジャッジします。つまり、審判と選手のリレーションシップがとても重要なのです。海外の選手は意に反することがあれば、審判の判定に対し当たり前のように意見します。
しかし日本の場合、クレームは出すのですがただの文句になってしまっている。そこで審判の判定に対して臆せず対応できることが大切なのです。実際、私自身も初めて海外に出たときに、審判とのコミュニケーションや語学の重要性を痛感しました。その後、ある程度審判とよいリレーションシップが出来るようになって、2008年の北京オリンピックで銀メダル獲得という結果に結びつきました。
島田 なるほど……実体験として、英語の必要性を感じていたんですね。
選手を使い捨てにしない信念。
太田 競技生活で結果を出せば、選手たちの将来もより良くなります。しかし、たとえ競技で思うような結果が残せなかったとしても、最低限英語ができれば人生の選択肢は広がってくる。よく「アスリートファースト」と言いますが、それが大切なのはもちろんですが、私達はもう一歩踏み込んで、選手たちの未来がより豊かになる「アスリートフューチャーファースト」を掲げました。
彼らの『未来』を見据えた時に、英語力は必要不可欠だと考えています。すでに昨年から選手たちには英語学習に取り組んでもらっていますが、今後は365日、24時間稼働のオンラインシステムを導入し、選手たちには世界のどこにいても英語を学べるシステムを無償で提供し、選手個々の英語力の向上を期待したいです。
協会としては、選手を使い捨てにしない、ただの商品としては扱わないという信念があります。スポーツの世界ではどの競技でもセカンドキャリア問題を抱える中で、選手たちが引退後にどのように社会で活躍していくかが非常に大切なことだと捉えています。「フェンシング出身者はすごくいいよね」といった高評価につながれば、協会にとっても非常に大きなブランドになりますから。
そういえば、選手のセカンドキャリアという意味では、実はもう1つ、協会として試みていることがあります。日本代表のユニフォームに、個人のスポンサーの枠を1つ選手に提供しているのです。
島田 その稼ぎは各々にまかせる、と。