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<新時代を担う大器>
中井卓大「レアルに衝撃を与えた才能」
posted2019/06/09 11:30

text by

栗田シメイShimei Kurita
photograph by
Kenzaburo Matsuoka
“あの少年は何者なんだ”
'12年夏の北海道。選手視察を目的に、この地を訪れていたレアル・マドリーのスタッフたちは、驚きを隠せなかった。彼らの関心は、滋賀県から来た天才少年のボール捌きに注がれていた。
当時、クラブのU-11世代の監督を務めていたイニアッキ・ベニ氏が述懐する。
「誰も彼のボールを取れないし、取られない。突出した技術に加え、自分と相手の距離感を完璧に理解する“感性”も目を引いた。マドリードに連れて行っても、結果は同じさ。試しに3学年上のカテゴリーで練習させても、面白いようにDFを抜いていく。存在感は圧倒的だった」
その衝撃から2年弱、中井卓大はフットボール界を席巻してきた白い巨人のユニホームに袖を通すことになる――。
中井の才能の片鱗を感じさせる余聞である。あれから6年。“ピピ”の愛称で知られる中井は15歳を迎え、マドリードで逞しく成長を遂げている。
「真面目で、素直。適応能力が高い」
彼を知るレアル関係者に中井のことを尋ねると、口を揃えてこう賞賛する。
彼らの発言も、改めて中井の軌跡を辿れば腑に落ちる。渡欧後わずか1年ほどでスペイン語を習得し、短所とされた体格面も、1日4度の食事で180cmを超えるまでに発育した。大半のチームメイトがクラブを去っていく中、今や在籍年数では最古参の1人となった。そして、国内のタイトルを総ナメにするチームで主力を担っているのだ。その事実が、レアルからの高い評価を示す何よりの証左でもある。
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