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「ボールを低めに集める」は古い?
筒香の三振から感じる野球の新潮流。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2019/05/21 11:45
筒香嘉智は球界屈指のローボールヒッターだが、彼以外にも、低いボールの方が打ちやすいという打者は少なくない。
高めから変化させる、という発想。
また、高めへの配球が増えたもう1つの理由が、ピッチトンネルである。こちらもデータ分析から生まれた配球の考え方だ。
ピッチトンネルとは、バッターに球種の違いを認識させないために、異なる球種を同じような軌道で投げるというものだ。バッターからおよそ7メートルの地点にリングがあると想定して、全ての球種をそのリングを通る軌道で投げることで、球種の判別を難しくさせるのだ。
裏を返せば、投げた瞬間に指先からボールが浮き上がる緩い変化球や、下に叩きつけるような軌道のストレートは良しとされない。
ピッチトンネルを構成するうえで、ストレートも高めに投じることが必要と考えられているというわけである
もっとも、メジャーの流行がそのまま日本の野球界で使えるかというと、そうとは限らない。フライボールレボリューションの日本での浸透度や、日本の打者はメジャーに比べてミートポイントを前に置くタイプが多いことを考えると、ピッチトンネルの重要性は検討の余地がある。
中日・大野は低めより高めが得意。
ただ、この2つの考え方をそのまま取り入れないにしても、ドラゴンズが筒香を抑えた配球を見ていると、高めのストレートは効果的にも思える。
2年ぶりの勝利を挙げ、今季は中日のローテーションを担う大野雄大も、高めのストレートの重要性を感じている1人だ。
「僕の場合はという話になりますけど、もともと高めに投げ込んでいくタイプですし、低めは狙わないようにしています。低めに投げろと言われる時もありますが、低めのストレートは球の勢いが死んじゃっている気がするので、僕が求めるべきコースじゃないのかなと。
15日のDeNA戦で伊藤光選手に満塁ホームランを打たれた球は、まさに低めでしたからね。やっぱり、低めに投げるとバットの軌道に合ってしまうと思うんです。高めの方が窮屈やろうし、そこの強い球を求めていくべきだと考えています」