ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
あと1歩でオーガスタに立てた青年。
中島啓太は負けず嫌いで尖っている。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2019/05/15 17:00
昨年のアジア大会では団体戦、個人戦で金メダルを獲得した中島啓太(日体大)。5月のダイヤモンドカップでは予選を通過し、4日間を戦い抜いた。
「どハマリした」栄養学。
先輩とは別の大学に進み、3人部屋で過ごす毎日は「寮と練習施設、トレーニングジムが同じ施設内にあるので、本当に充実しています」という。177㎝の身長から繰り出されるビッグドライブはいま、日本ツアーのプロと比べても遜色なく、アイアンも、パットも、というオールラウンダーとしての潜在能力を強く印象付けるようになった。
ただ、コース内の技術以上にいま中島が胸を張れるのは意外なところ。
「金谷さんに勝てるところ? ゴルフ面ではないんですけど、“栄養学”とか」
昨年6月、ナショナルチームの合宿中、専門の栄養士による講習を受けて「どハマリした」。日々のパフォーマンスの発揮、疲労回復には健康的な食生活も重要。その後、自分でも栄養学に関する本を購入し、実践に移した。
ラウンド中は、栄養バランスにも優れた素焼きのミックスナッツをもぐもぐ……。体育大学の寮の食事は、競技別に用意されるわけではなく、体を大きくすべきアスリートと、そうとはいえない部員に対しても、ほぼ同じメニューが用意される。
中島は揚げ物などの過度な脂肪や糖質摂取に注意を払い、ナショナルチームの栄養士にも相談しながら、食生活を送る。「ラーメンはもうすぐ1年、甘いものもしばらく食べていません」という節制ぶりだ。
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トップアマとはいえ、学内のゴルフ部には入りたて。“部活帰りにみんなでラーメン”なんて、よくありそうな日常だが、「そういうことは(先輩や仲間に)最初に言いました。『自分はしっかりやりたいので』って」。集団生活の中ではずいぶん鼻持ちならない1年生なのでは……と勝手に心配してしまう。
プロのキャリアに必要なもの。
けれど、そんな“尖り方”はいずれ足を踏み入れるプロの世界では、持ち合わせるべき気質かもしれない。大海の船は先端が鋭くないと、波をかき分けて進めない。
それにいまの中島の生活習慣の決まりは、今後の彼の行動を縛るものでもない。いずれ別の指導者や、考え方に接して“揚げ物、ラーメン、スイーツ大歓迎”という決断にも至るかもしれない。だから外野で方法論の是非を問うつもりもないし、その都度“やり方”の価値判断をするのは本人でしかない。
手段はどうあれ、定めた目標に向かい自分を律する行動力こそ、長いキャリアで必ず重宝されるものだ。