ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
あと1歩でオーガスタに立てた青年。
中島啓太は負けず嫌いで尖っている。
posted2019/05/15 17:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Yoichi Katsuragawa
グッドルーザーとか、クラスアクトというフレーズは、アスリートが持つべき資質を表しているに違いない。たとえ敗れた当事者になっても、目の前の勝者を讃えて喜びを分かち合う。それがスポーツの良さであるし、そんな理性的な態度は人間らしい精悍さを感じさせる。
そうは言っても、負けて流す悔し涙が否定されるわけではない。
前回のコラムで紹介させていただいた金谷拓実(東北福祉大3年)は、昨年秋にシンガポールで行われたアジアパシフィックアマチュア選手権で優勝し、今年4月にマスターズに出場。見事4日間を戦い抜き、貴重な経験を得た。
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物事には裏と表、光の当たるところには影ができるわけで、その“アジアアマ”で2位に終わり、オーガスタ行きを逃したのもまた、若き日本人選手だった。
先輩・金谷に敗れ、オーガスタを逃す。
中島啓太(なかじま・けいた)は2000年6月生まれの18歳。
これまたジュニア時代から注目されてきた将来有望な才能だ。
昨年8月にインドネシアで行われたアジア大会では2つ年上の金谷らと臨んだ団体戦だけでなく、チームで最も若いにもかかわらず個人戦でも、20年ぶりに日本に金メダルをもたらした。
その約1カ月半後、アジアアマで中島は金谷に敗れた。最終日は同じ首位に2打差からスタートし、前半に1歩前に出ながら逆転負け。ナショナルチームでは同部屋になることも多い先輩にオーガスタ行きのチケットを譲る結果になった。
中島はこの春、日体大に進学した。かつては高校卒業後のプロ転向を目指したが、学生のうちにアマチュアの世界大会をより多く経験する道を選んだ。