Jをめぐる冒険BACK NUMBER
オシムが先取りしていたクロップ流。
当時最強の磐田を翻弄した策とは。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byGetty Images
posted2019/05/09 10:30
オシム監督がジェフで巻き起こした一大センセーション。その象徴的存在が阿部勇樹だった。
21歳阿部がリーダーとなり席巻。
21歳のキャプテン・阿部勇樹をリーダーとする若いチームはリーグを席巻。台風の目となるどころか、11節終了時に3度目の首位に躍り出ると、12節でベガルタ仙台を5-1で撃破して首位の座をキープ。こうして2003年7月20日のファーストステージ13節で、勝点2差で追走する磐田との天王山を迎えたのである。
この日、ヤマハスタジアムのスタンドには、岡田監督の姿があった。前日に敵地でセレッソ大阪を下し、磐田を抜いて暫定2位に浮上したばかり。すでにファーストステージでは市原、磐田との対戦を終えていたが、大一番の観戦に訪れたのだった。
前半は王者・磐田が主導権を握った。
前半12分には、服部年宏、藤田俊哉、名波浩、前田遼一、藤田、前田と素早く繋いで、最後にグラウがシュートに持ち込んだ。その間、市原の選手はボールにも、磐田の選手にも触れられない。
磐田の前に市原のプレスが空転。
先制点が生まれたのは、前半27分。名波のCKを前田が折り返し、グラウが頭で押し込む。これでグラウはシーズン通算12ゴールとし、得点王争いで首位タイだった市原のチェ・ヨンスをリードした。
「誰もが磐田が勝つと思っていたから、それを裏切るような結果を出そうぜっていう雰囲気が、試合前のチームにはあった」
のちに阿部はそう振り返っているから、市原が怖気づいたわけではない。磐田のスピーディで正確なパス回しが、市原のプレスを空転させたのだ。奪いに行きたくても、ワンタッチでテンポ良く回され、市原はプレスを掛けるタイミングすら測れない。
だが、ハーフタイムを挟んで、ゲームの流れが大きく変わる。