JリーグPRESSBACK NUMBER
「シュートはゴールへのパス」なのか?
大木武と大黒将志の理論から考える。
posted2019/05/10 08:00
text by
渡辺功Isao Watanabe
photograph by
J.LEAGUE
「決定力はどうすれば向上するのか」
日本サッカー界積年のテーマについて、あらためて考えさせられるゲームに出会った。
ゴールデンウィーク10連休2日目の4月28日、J2栃木SC対FC岐阜戦。ホームの栃木は最近5試合勝利がなく、対する岐阜も7試合勝利から遠ざかっていた。お互い下位に沈みつつあるなか、とりわけ岐阜は4試合連続ノーゴールでの4連敗中。練習でBチームが組めないほどケガ人が多発、前々節のV・ファーレン長崎戦では先制のチャンスでPKを失敗するなど、深刻なゴール不足に陥っていた。
いざゲームが始まると「自分たちには何の問題もない」(風間宏矢)と言うほど、終始岐阜が攻勢に進めた。しかし、前半にCKからつくった絶好機を連続して逃すと、後半11分、栃木FW大黒将志にヘディングで決められ、またしても先制点を奪われてしまう。
39歳大黒は「試合を想定」。
一瞬相手の前に出たこのゴールシーンのほかにも、マーカーをモノともせずに左足でクロスを合わせたり、右足でのジャンピングボレーだったり。この試合でまず眼を惹いたのが、大黒のシュートの上手さだった。
「僕ももっと上手くなりたいし、シュートが上手くなる方法があるなら教えて欲しいくらい(笑)。練習するしかない。僕が言えるとしたら、試合を想定してシュート練習することくらい。シュート練習のためのシュート練習ではなくて、試合で起こり得ることを常にやること。自分のなかに、いくつかのパターンがあって。それをいつもやっていれば、試合ではだいたい、そのパターンのどれかにハマるんで」
2004年に同シーズンのJ1日本人最多となる20ゴールをあげ、一躍脚光を浴びてから15年。今月の4日で39歳になったが、みずから工夫して身につけた技術は、たやすく錆び付いたりはしない。
詰まるところ「大黒がいたか、いなかったのか」の差で、このまま試合の白黒がつくのかと思われた。
だが、後半40分。右サイドからのラストパスを、途中出場の岐阜FW山岸祐也が右足ボレーで合わせて同点ゴール。岐阜がチーム452分ぶりの得点でドローに持ち込み、連敗をストップすることになった。