濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
RIZIN復帰戦勝利は成長過程。
RENAの“寝技勝負”に見た可能性。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2019/05/01 11:00
大晦日に対戦するはずだったサマンサを倒し、連敗を止めたRENA。試合後は「ホッとしました」と笑顔を見せた。
負けられない試合でRENAが見せたのは?
サマンサが打撃の距離を潰して組みついてくるのは予想できた。その流れに、あえて逆らわず対処していったのだ。テイクダウンされても、下からアームロックや腕十字を狙う。この日のRENAは、関節技を極めて一本勝ちしようとする姿勢が前面に出ていた。
2ラウンドにはサマンサのタックルで倒されながら、そのまま体勢を切り返してマウントポジションへ。パウンド、ヒジを浴びせ、RENAは一気に優位に立った。ラウンドの残り時間も充分にあったから、このまま打撃をヒットさせ続ければレフェリーストップを呼び込むこともできただろう。あるいは残り30秒くらいのところまで打撃で“削って”から十字なりチョークを狙ってもよかった。
ところがRENAは、相手の隙を見つけるとすかさず十字にトライ。これをディフェンスされ、結果として優位なポジションを手放してしまった。「まだそこまでの(状況判断をする)視野がなかったですね」と試合後のRENAは語っている。
目指すは「一本取れるトータルファイター」
判定3-0で勝ったRENAだが、観客の溜飲を下げるようなフィニッシュは見られなかった。自ら首投げを狙い、そこからバックを奪われる場面もあり、この試合でのRENAは“勝つためには余計なこと”を何度もしていたと言っていい。
ただ“勝つためには余計なこと”も“強くなるためには必要なこと”ではあるのだ。安全に勝つなら、寝技をせずに打撃勝負が最善。しかし今後の成長を考えれば、実戦の場で(致命傷にならない失敗も含めた)寝技の攻防をフルラウンド経験できたのは大きい。
MMAには打撃vs組技、キックボクシングvsレスリングといった他流試合的要素がある。しかしそれは“その競技しか練習していない選手同士の闘い”ではない。ストライカーにとってもレスリングや柔術の練習は不可欠だし、逆もまた然り。現代MMAにおいて打撃が得意、寝技が得意という個々の持ち味は“あらゆる局面で水準以上に闘える”という前提があってのことだ。RENAは、その前提を作っている最中なのである。
「これからもっと寝技も頑張って、一本取れるトータルファイターを目指します」
リング上で観客にアピールしたRENAは、インタビュースペースでもこんな言葉を残している。
「いろいろ試して、いいところも悪いところもあって。いま自分ができることは出せたかなと思います。この3年、4年練習してきたことがやっと出せるようになってきた。少しは満足してます。まだ時間はかかりますけど、完成形に近づいてきました」