プレミアリーグの時間BACK NUMBER
エジルは再びハッピーになれるか?
良き羊飼いエメリの起用法に注目。
posted2019/02/26 11:00
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
人名とは、時として皮肉なもの。2019年のメスト・エジルも、その一例だ。トルコ系の血を引くアーセナルMFの「メスト」という名には、同国の言語で「ハッピーな人間に」との願いが込められているらしい。
ところが、10番を背負うプレーメイカーは、ウナイ・エメリ新体制下でチームの攻撃を組み立てる以前に、ピッチに立つことすら許されなくなってきた。
年明けから1カ月半で行われた計9試合で、先発は1試合のみ。途中出場も1試合しかなかった。
それでも、チーム1の高給取りなのだから「ハッピー」に違いないという見方もある。1年ほど前にクラブは年俸アップを含む3年半契約を与えた。指揮を執っていたアーセン・ベンゲルは前監督としての立場で「ぬるま湯のような環境を与えてしまったかもしれない」とも発言している。
だが、たとえ1週間で35万ポンド(約5千万円)を稼ぐ身であっても、サッカー選手はサッカー選手だ。才能を発揮する機会が乏しい当人は、マントまで身につけていながら空を飛ぶことを許されないスーパーマンのような心境ではないだろうか?
ベンチ外は理解できないの声も。
解説者のティム・シャーウッドの言葉を拝借すれば、練習するだけのエジルは「豪勢なジム通いの日々」ということになる。
シャーウッドはメディアで、「アーセナルの戦力は、エジルほどのクオリティでも必要としないレベルにはない。彼の起用なくしてトップ4復帰はあり得ない」とも言っている。
アーセナルの先輩イアン・ライトもシャーウッドと同意見だ。古巣への思い入れを隠せない解説が人気のライトは、1月12日にエジル不在でウェストハムに敗れた(0-1)ロンドン・ダービーを受けて、「ベンチ外は理解できない」と悩ましげだった。中立的な立場の筆者も同感である。