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天才カナーレスが大怪我から復活。
肉体改造と食事療法で代表入りへ。
posted2019/03/01 10:30
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
Getty Images
挫折は人を強くする?
必ずしもそうとは言えないが、ベティスのセルヒオ・カナーレスの場合、手痛い躓きは結果的にプラスに働いた。
彼が生まれたのは1991年、スペイン北部サンタンデールだ。幼い頃から優れた技術とゲームビジョンを発揮し、10歳で地元の名門ラシンに加入すると、たったの7年でトップチームまで駆け上がり、2009-10シーズンの半ばにはR・マドリーとの契約を勝ち取った。
18歳にして、である。順風満帆なんてものじゃない。
ところが実際に移籍し、新しいユニフォームを与えられた途端、その風は止んでしまう。2010-11シーズンのリーガは10試合に出場して282分間プレーしたのみ。CLと国王杯を合わせても15試合518分だけの出場にとどまった。
「マドリーで活躍できなかったことを挫折とは思っていない。あれは学びの期間だった」
大人になったカナーレスはそう振り返るが、相当のショックは受けたであろう。さらにそれが潮目となり、右肩上がりだった彼のキャリアは以後ジェットコースターと化す。
バレンシアで2度、ソシエダでも重傷を負う。
翌年移ったバレンシアでは、右膝の前十字靱帯損傷の重傷を2度も負った。挫けることなく復帰を果たし、出場機会を求めてR・ソシエダへ移籍。だが、そこでまたもや前十字靱帯損傷に見舞われてしまう。今度は左膝である。
それでもカナーレスは立ち上がり、2016-17シーズンの序盤にはピッチに戻っていた。その時点ですでに「不屈」の見本である。
さらに目を見張るのは、昨年の夏にベティスに入ってからだ。
現在28歳になったカナーレスはドリブルのスピードが上がり、緩急のタイミングが鋭くなり、屈強なDFと競り合っても当たり負けない強さも備えている。また、どんな状況でも正しい姿勢を保っていられるから、パスの精度が高い。つまるところ、パフォーマンスのレベルが怪我をする前よりも上がっているのだ。