Sports Graphic Number SpecialBACK NUMBER

<猛虎春秋大辞典>
芝もトンボもミリの世界! 阪神園芸、伝統のスゴ技。 

text by

日比野恭三

日比野恭三Kyozo Hibino

PROFILE

photograph byHideki Sugiyama

posted2015/09/21 08:00

<猛虎春秋大辞典>芝もトンボもミリの世界! 阪神園芸、伝統のスゴ技。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

 広島カープの遊撃手だった高橋慶彦に言われた言葉を、辻啓之介ははっきりと覚えている。

「広島(旧市民球場)は球がどう跳ねるか分からん。それに比べたら甲子園はまっすぐ。こんなとこでエラーしたら恥ずかしい」

 辻は'78年に阪神園芸に入り、'03年までグラウンドキーパーとして甲子園球場の維持管理にあたった。

 入社後、最初の大仕事は芝の品種を変えたことだ。当時の甲子園の芝は冬になると枯れていた。「センバツも緑の芝でやらせてあげたい」。辻は師と仰ぐ上司の藤本治一郎と、ゴルフ場のティーグラウンドの芝に目をつけ、一年を通して緑を保つ芝に植え替えた。

 芝をどれだけの長さに刈るかは、その時々のチーフが決める。辻の持論では「10mmが最適」だという。

 メジャーの芝を見慣れたバースには「なんでこんなに短いんだ?」と驚かれ、外野を守っていた桧山進次郎からは「打球が速い。捕れるはずのボールが捕れない」と愚痴られた。だが辻も譲らなかった。

「長く刈れば緑は濃くなるけど、短い方が球足が速くなって野球がおもしろいやろ。雨に濡れた時にも乾きやすいしな」


 グラウンドキーパーはまさに職人芸の世界。ただ水を撒くのでも、任されるようになるまでには年単位の時間を要する。

 天気の読みも重要なスキルだ。必要なのは、あくまで甲子園球場上空の局地的予報である。

「昔、球場職員は空港に問い合わせてたけど、僕らはあんまり信用してなかった。北に六甲山、南に海という地形的なこと、それに雲の方角や風向きを見て、ひと雨きそうだから水撒くのを控えめにしようとかね。藤本さんはお父さんが漁師だったこともあって、天気を読むのがうまかった。僕らもそれを見て覚えていったんだ」

こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
ウェブ有料会員になると続きをお読みいただけます。

残り: 280文字

ウェブ有料会員(月額300円[税別])は、この記事だけでなく
NumberWeb内のすべての有料記事をお読みいただけます。

<阪神タイガース八十周年特集>猛虎、神撃。
阪神タイガース
辻啓之介

プロ野球の前後の記事

ページトップ