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<冷静なるW杯デビュー>内田篤人「4年間を2分で無駄にしたくない」
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byAtsushi Kondo
posted2014/06/18 06:00

髪に降り注いだ生温かい雨のしずくを、内田篤人は右手で軽く振り払っていく。
試合後、しっかりとした足取りから「失意」を感じることはなかった。打ちひしがれることなく、彼は前を見据えてピッチを去っていった。
「ここで1つ負けてズルズルっていってしまうチームなら、そういうメンタルの選手が集まったチームだと思う。もう一回チームとして、力がグッと出せるようじゃないとダメなのかなと。せっかく4年間やってきて、(失点した)その2分で無駄にするのはもったいないですからね」
ミックスゾーン(取材エリア)に現れた内田は、いつもと変わらない口調ながら、いつも以上に強く言葉を吐き出した。
誰もが自分の色を出せず、混乱に陥るなかで、彼だけは90分間、冷静であり続けた。
後半42分、日本のコーナーキックからクリアボールを拾われ、カウンターで3失点目の危機にさらされた。そこを相手ペナルティーエリア前にいた内田が全力で自陣まで戻っていき、スライディングでカットする。ジェルビーニョのドリブルのスピードを緩めさせたうえで、最後は奪い取ってしまう頭脳的な駆け引きだった。
先を考えれば1点差と2点差では同じ負けでも意味が違ってくる。順位で勝ち点が並ぶ際、得失点差で差し切ることも可能になるからだ。この最後の“ファインプレー”が、ザックジャパンの希望の火を消さなかった。
2度目のW杯にして、初めて大舞台のピッチに足を踏み入れた。
こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
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