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ゴルフ界の変わり者・デシャンボー。
物理科学を駆使し、プレーはスロー。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAFLO
posted2019/02/13 07:00
今シーズンは絶好調のデシャンボー。スタイルの認知度も上がるため、落ち着きどころを見つけてほしい。
デシャンボー「どうか信じて欲しい」
しかし、デシャンボーは大真面目に「どうか信じてほしい」と主張している。何を信じてほしいのか? 彼の主張を列挙すると、こんな内容になる。
自分はまだプロゴルファーとしての経験値が低い。だからプレーに時間がかかる。初出場の大会の場合は、なおさら時間がかかる。だが、いろいろな経験が増えれば、自分のプレーは間違いなく早くなる。
でも、ゴルフには人生と生活がかかっている。だからどうしても時間がかかる。
そして、「オン・ザ・クロック」になった状況でプレーすることには、もうすっかり慣れている。だから計測されても自分が焦ったり動揺したりしてプレーに悪影響が出ることは、まずない。それに、自分のプレーのペースは誰にも悪影響を与えていない。
デシャンボーは、そう語った上で、「僕はスピードアップに努めている。どうか信じてほしい」と真顔で言った。
信じてもらうための、明らかな前進を。
デシャンボーが物理科学的な見地から展開している奇抜な持論、独自のプレースタイルは、単に大風呂敷を広げているわけではなく、次々に結果を出しているのだから、そこは評価されて然るべきだ。それに、独自性を活かしているプレーヤーは個性的で素敵だ。だから是非とも頑張ってほしいと心底、思う。
だが彼自身、そうしたユニークな考え方や姿勢が周囲の理解を得ているとは思っていないらしいのだ。
「みんなが納得しているのかどうかは、わからない。でも、僕がやっている諸々のことは、僕の脳の中では、すべて納得できるものばかりなんだ」
スロープレーに対する考え方や姿勢も、それと同様で、みんなが納得しているかどうかはわからないが、デシャンボーの脳の中では納得できているという意味だ。
そうは言っても、「誰にも悪影響を与えていない」という部分だけは、さすがに納得しかねる。「オン・ザ・クロックでプレーすることには慣れている」という部分は、「えっ? そんなことに慣れてどうするんだ?」と言い返したくもなる。
それでも平然とプレーして、ちゃんと勝ってしまうところが、いい悪いはさておき、「デシャンボーらしさ」ではあるのだが、まずは「毎試合でオン・ザ・クロック」という状態を改善しようではないか。
そうやって彼が誰の目にも明らかな前進を1つでも見せてくれたら、「よし、キミを信じよう」という人は確実に増えるはず。その確率は、物理科学に基づかなくても、「絶対に増える」はず。アナログで科学音痴な私でも、そう言い切る自信だけはある。