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春高直前までバラバラの金蘭会が、
女子3校目の連覇を達成できた理由。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph bySho Tamura/AFLO SPORT
posted2019/01/17 07:00
2大会連続3度目の春高バレー優勝を果たした金蘭会。決勝では東九州龍谷にフルセットで競り勝った。
ほぼ年代別代表の難しさ。
単純な1人1人の戦力を足し算するだけならば、技術も体格も金蘭会は決して劣らない。何しろユースやジュニアといった年代別の日本代表がズラリと揃う顔ぶれは豪華で、経験値も高い。だがそれが逆に仇となった、と中川は言う。
「ユースやジュニアの代表が1人、2人ならいいんです。でもほぼ全員がそうなると、個性も強いしプライドも高くて主張もぶつかるばかりで、誰がまとめるんだ、と。周りからすればいろんなカテゴリーで選ばれている選手が揃うんだから強いだろう、と思われてきましたけど、実際はそうじゃない。いっぱいいるからこそ、難しいことばかりでした」
インターハイや国体で負けた後はもちろん、実は春高の直前までチームはバラバラだった。特にエースの西川有喜に対しては、個性豊かなチームをまとめるために「エースがしっかりしてほしい」という期待が高まれば高まるほど、その裏返しとして「エースなんだから決めて当たり前」と身勝手な責任を押し付けた。練習試合でも西川が打つ際はフォローに入らず、「何で決めないんだ」と風当りばかりが強くなる。
主将に手を差し伸べた曽我。
こんな状況では春高で勝つことなど到底できない。主将として苦悩する中川に手を差し伸べたのがミドルブロッカーの曽我啓菜だった。
「つかさはキャプテンだけどセッターなので、自分が直接点を取ることはできない。言うなら“つなぎ”のポジションなんです。だからそこだけに背負わせていたらみんな変わらない。押し付けるんじゃなく、自分が得意なこと、不得意なことを話し合って、助けてほしい時は『助けて』と言うし、自分はブロックが得意だからブロックの分野は任せてほしい。アタックは任せるから、と明確にしました。
絶対的なリーダーはいなかったけれど、1人1人の役割を理解して、何より『絶対成徳に勝って日本一になりたい』という気持ちがあったから、最後の最後に全員がぎゅっとなれたんだと思います」
ようやくチームとして1つにまとまった。宮部愛芽世が大会直前の練習試合で捻挫をするアクシデントにも見舞われたが、順当に勝ち進み、準決勝進出を果たす。だがそこでまた、予想外の出来事に見舞われる。
金蘭会の試合前に行われたもう1つの準決勝で、下北沢成徳が敗れたのだ。