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春高直前までバラバラの金蘭会が、
女子3校目の連覇を達成できた理由。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph bySho Tamura/AFLO SPORT
posted2019/01/17 07:00
2大会連続3度目の春高バレー優勝を果たした金蘭会。決勝では東九州龍谷にフルセットで競り勝った。
東九州龍谷という独自路線。
今年に限らず、ここ数年において高校女子バレー界を牽引してきたのは金蘭会と下北沢成徳であったのは間違いない。ブロックとレシーブが連動したトータルディフェンスを誇る金蘭会が勝利すればブロックに対する意識が高まり、トレーニングを強化し、助走を取ってパワーを乗せたスパイクを重視する下北沢成徳が勝利すれば他も同じように追随する。
そんな中、唯一と言っても過言ではないほど、独自の路線を貫いて来たのが東九州龍谷だった。高さではなくスピードを武器に、ネットに近い位置から「強さ」よりも「速さ」を重視で攻撃を展開する。それが東九州龍谷の代名詞でもあったのだが、準決勝の下北沢成徳戦はガラリとスタイルを変えて臨んできた。
ミドルブロッカーもブロックの後にしっかりアタックラインまで下がって助走する。これまでは2歩助走だったが、3、4歩の助走で放たれるスパイクは威力が増し、ブロックの移動もサイドステップではなくしっかり腕を振りクロスステップで高さを出した。
パチン、ではなく、ドシン、と響くスパイク音。その変化に、敗れた下北沢成徳の小川良樹監督も感服し、称賛した。
下北沢成徳の敗退にショック。
「今までの東龍はトランジションであれほど高くトスを上げることはなかったんです。ピュッと速いトスを上げて無理に打ってくるので、ブロックで捕まえることはそれほど難しくなかった。でも今回は速い中でも、小さい選手もフル助走して高いトスをちゃんと打つ。正しい進化といいますか。負けて悔しいですが、ちょろちょろやられてではなく、がっつりゲームしてやられたのは致し方ない。そう思わされた試合でした」
三冠を目前に敗れた下北沢成徳の選手はもちろんだが、それ以上に大きなショックを受けたのが金蘭会の選手たちだった。何しろこの1年ずっと、最後の舞台となる春高で日本一になるために想定してきた相手が、対戦する前に負けてしまった。練習試合もせず、互いの手の内を隠し、サーブもブロックも完璧な対策をしてきたのに、それもすべて水の泡。
だがそれ以上に怖かったのは、あの成徳に勝った東龍はどれほど進化を遂げているのか、ということ。勢いに乗っているであろう相手に勝つために、少ない時間でどれだけ準備できるか。試合映像から相手のパターンを頭に入れ、試合中も変化を共有する。