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全日本バレー女子主将・岩坂名奈。
リーダーになった元“いい子ちゃん”。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph bySho Tamura/AFLO SPORT
posted2018/12/29 10:00
平成最後の天皇杯・皇后杯全日本バレーボール選手権は、久光製薬が2年ぶり7度目の優勝を果たした。
久光製薬の主将も引き受けた。
世界選手権やワールドカップは14名ベンチ入りできるが、オリンピックは12名のみ。現在国内で行われているVリーグは優勝争いの場であることはもちろん、オリンピックに向けた熾烈なメンバー争いの場所でもある。
たとえ今、全日本でキャプテンだからといって、そのままキャプテンであり続けられるわけではなく、メンバーに入れる保証もない。
これまで以上に、岩坂にとっては結果が求められるシーズンであるからこそ、自身のスキル向上にチャレンジすることと並行して、甘さを断ち切るべく、久光製薬のキャプテンも引き受けた。
人を思いやれる優しい子。
実は2017年も酒井新悟監督はキャプテン就任を打診したのだが、その時は「自分のことに集中したい」と固辞した。当時とは明らかに違う、と酒井監督は言う。
「『このチームを引っ張って勝たせたい、その中で自分も存在感を出して全日本で勝負したい』という覚悟を感じました。常に人のことを思いやれる優しい子なんですが、今はただの“いい子ちゃん”だけではないキャプテンシーが出てきました。
時には集中して周りを寄せ付けない雰囲気を出しながら、試合になれば全日本で試合に出られなかった経験を活かして、周りを気遣い、チームをまとめる。置かれた立場を受け入れて、乗り越えようとしているし、自分の弱さを認められるようになったのも、成長の証だと思うんですよ」
2018年12月23日、天皇杯・皇后杯の決勝。アキンラデウォはもちろん、荒木や渡邊彩ら、トヨタ車体のミドルブロッカーが攻守で存在感を発揮する一方、岩坂の攻撃に対する警戒は薄く、自分が不甲斐ないからとわかっていても、攻撃に入る際、自身の前にブロッカーが1人もいない状況に、心が折れそうになることもある。
だがその状況を悲観的に捉えるだけでなく、前を向いて「自分が前の時は攻撃が回らないことがチームの課題」と言い切る姿は、全日本でミックスゾーンを走り抜けていた頃とは違う。変わらなければいけない。変わる、という強い意志があった。