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全日本バレー女子主将・岩坂名奈。
リーダーになった元“いい子ちゃん”。
posted2018/12/29 10:00
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Sho Tamura/AFLO SPORT
2018年最後の公式戦となった、天皇杯・皇后杯全日本バレーボール選手権を久光製薬が2年ぶりに制し、チームメイトは「キャプテン、キャプテン」と胴上げの中央に来るよう促す。
無理、無理無理、絶対無理。
最初は顔の前で手を振り、捕まらぬように逃げ回る。最後は顔の前で大きくバツをつくる姿に、会場からも笑いが起こる。
謙遜でも照れでもない。
自分はそんな立場じゃない。今はまだ、及ばない。
それが、今季からキャプテンを務める岩坂名奈の本心だった。
メダル獲得が使命だった8月のアジア大会は4位。2012年のロンドンオリンピック以来の表彰台を目指した世界選手権も6位。日本代表の主将として迎えた2シーズン目となる2018年、岩坂は何ひとつ結果を残すことができなかった。
それでも「やるべきことはやった」と胸を張れればまだよかったが、出場機会も限られ、出る機会があってもチームを勝利に導くような活躍ができたわけでもない。
ミックスゾーンで流した涙。
試合直後のミックスゾーンで「声をかけないでくれ」とばかりに、大きな体を小さくかがめて走り抜ける姿を見るたび、置かれた立場が複雑で葛藤があるであろうことは理解できたが、それでも主将なのだからここで逃げるべきではないだろう、と思ったのも事実だ。
アメリカとの5位決定戦に敗れた後、ミックスゾーンで立ち止まった岩坂が泣いた。
「代表って、常に結果が求められるところで、ましてや日本開催。前よりもっといい成績を求められることもわかっていました。でも結果を残すことができず、自分のプレーも中途半端。もちろん試合に出たいし、日本が勝つために自分もコートの中にいたいけれど、技術不足も痛感しました。
大会期間中も心が折れそうで、『私がここにいる意味はあるのかな』って何度も思ったし。口では『覚悟を決めました』と言ってきたんですけど、ふたを開けると全然もろかった。甘さもあったし、楽なほう、楽なほうへ逃げていたなぁ、って。もっと何かできたんじゃないか。そう思ったら、情けないし、何より、悔しかったです」