フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
ファイナルに来た2人の元世界王者。
復帰した高橋大輔にエールの言葉。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAkiko Tamura
posted2018/12/16 09:00
左からブライアン・ジュベール、ステファン・ランビエル。指導者としても、しっかり世界の舞台に戻ってきた。
「ぼくがブライアン・ジュベールだから」
現在は故郷のフランスのポワティエでスケートクラブを主宰し、およそ100人の子供たちを指導しているという。
コーチになって最も難しいことは、「自分がやってうまくいった方法が、必ずしも生徒には当てはまらないこと」だ。
「それぞれの生徒にとって、もっともうまくいくメソッドを考えていくのがコーチの仕事。ぼくにとって4回転はそれほど難しくなかったけれど、生徒は跳べない。どうしてできないんだ、と思うこともあります」と苦笑い。
特にフランスでは、彼のことを知らないものはいないというほど一世を風靡したスター選手だった。だがそれは指導をしていくうえで、必ずしもメリットではないという。
「子供たちは、ぼくを失望させまいと必死になる。それは、ぼくがブライアン・ジュベールだから。そのプレッシャーはプラスに働かないこともあるんです」
「切り替えが難しい」とランビエル
一方ジュニア男子で3位に入賞した島田高志郎のコーチとして会場に来たステファン・ランビエルは2005年、2006年の世界チャンピオンである。
バンクーバーオリンピックを最後に競技から引退し、2014年にスイスのシャンペリにスケーティングスクールを開設。島田を指導するようになって今季で2シーズン目だ。
ランビエルは、まだ本人もプロスケーターとしてアイスショーで滑っていて日本の「ファンタジーオンアイス」の常連メンバーでもある。
スケーターである自分と、コーチとしての自分の気持ちの切り替えをするのが時には難しいと告白する。
「スケーターとして滑っているときは、自分がすべて。自分のコンディションのことだけに集中していればいい。でもコーチになったら、生徒のことが最優先です。その気持ちを切り替えるのに時間がかかりました」
自分自身のトレーニングのときは、「今から2時間は、自分のための時間だ」と言い聞かせて集中するのだという。