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日本人クライマーがタフになった2018年。
“個”の力を伸ばして、「2020年」を目指せ!
text by
津金壱郎Ichiro Tsugane
photograph byAFLO
posted2018/12/21 11:00
W杯マイリンゲン大会ボルダリング女子決勝(2018/04/14)野口啓代、野中生萌
敗れなければ見えてこない課題。
男子も楢﨑智亜、藤井快、杉本怜がボルダリングW杯でそれぞれ1勝をマーク。さらに、選手たちが今季最大の目標に掲げていた世界選手権のボルダリングでは原田海が優勝を果たした。
改めて男女ともにボルダリングでは世界トップレベルの実力があることを実証した日本代表には、東京五輪に向けて大きな経験を積むことができたシーズンでもあった。
世界選手権で初めて実施されたコンバインドは男女ともにメダルなしで終わったものの、日本代表が目指す“東京五輪でのメダル”に向けて、“敗れなければ見えてこない課題”を手にした。
また、他国に先駆けてオリンピック・フォーマットでの国内大会『コンバインド・ジャパンカップ』を新設したことで、選手たちは『アジア大会』、『世界選手権』、『アジア選手権』と、コンバインド大会の戦い方を数多く経験できた。
今シーズンのすべてのコンバインド大会に出場した野口は、次のように収穫を口にする。
「コンバインドが大会として行われたのは今年が初めてで、そのなかで4度も経験できたのは大きかったです。来シーズンに向けてレベルアップするために、何が足りないのかをしっかり把握できました」
日本代表同士でも“個の戦い”。
2016年夏に東京五輪での実施種目に決定してから、日本代表は毎シーズン、テーマを掲げて強化に取り組んできた。2017年は“選手層の拡大・底上げ”、2018年は“タフ”。そして、2019年は「“個の戦い”がテーマになる」と、安井ヘッドコーチは説明する。
「これまでの2年間は“チーム”として強化に取り組んできました。しかし、来年はオリンピックへの出場枠のかかる世界選手権がある。そこは日本代表同士であっても“個の戦い”ですから」
男女各20名で争われる東京五輪への出場権をかけた予選は、来夏に日本で開催される世界選手権から始まる。
安井ヘッドコーチは来季のテーマに“個の戦い”を掲げているのだが、「もうひとつの意味がある」と力を込める。
「個別種目の“個”という意味もあります。すべての個別種目のW杯で世界と戦える力をつけたい。ボルダリングだけでなく、リードやスピードの個別種目ごとにW杯などで活躍できれば、スポーツクライミングという競技全体の注目度は高まり、理解度もより深まると考えているからです」