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ドルトムントが“モダンジャズ”化。
ファブレ監督とクロップ時代の違い。 

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遠藤孝輔

遠藤孝輔Kosuke Endo

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photograph byUniphoto press

posted2018/11/29 08:00

ドルトムントが“モダンジャズ”化。ファブレ監督とクロップ時代の違い。<Number Web> photograph by Uniphoto press

今季ブンデスで首位を独走するドルトムント。ファブレ監督は今後、世界的名将の評価を手にできるか。

寛容さとディテールの両立。

 チームとしての規律を重んじる一方で、選手を約束事でがんじがらめにしないのがファブレ流だ。ミスはサッカーの一部と考える寛容さを持ち、選手たちを怒鳴りつけるようなことも滅多にない。

 テクニカルエリアで感情を爆発させるのは稀で、難解な数式を解こうとする数学者のように常に冷静だ。バロテッリがお馴染みのイライラから退場処分を受けた試合後も、ファブレは「(批判は)好きじゃない」と怒りを露にしなかった。

 もちろん、放任主義というわけではない。

 トラップする足はどちらがベターか、ポジショニングは適切か、動き出しの方向は合っているかなど、とにかくディテールにこだわり、普段のミーティングから選手に細かいアドバイスを送っている。

ペップとの共通点と違い。

 前述のアルフォンスが語るように、こうした部分はジョゼップ・グアルディオラに通ずるところだ。「ボールを持っている時に、ボールロスト時に、何をすべきか考えていなければいけない。予測しておく必要がある」という考え方も共通点として挙げられる。

 ファブレが2011年2月から2015年9月まで率いたボルシアMG時代は、ショート&ダイレクトパス主体のサッカーでリーグを席巻し、ドイツメディアから“ドイツ版ティキ・タカ”と絶賛されもした。

 ただ、現在のドルトムントからティキ・タカの香りは漂ってこない。

 ボールポゼッションに優れるのは確かだが、チームが最も怖さを発揮するのはカウンター時。主将のマルコ・ロイスやサンチョ、パコ・アルカセルらが猛烈なスピードで敵陣をぶち破り、卓越した個人技とコンビネーションプレーを織り交ぜながら一気に相手ゴールを陥れるのだ。

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