欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
サッカーと暴動は切り離せるか。
ドルトムントの「45人負傷事件」。
posted2018/11/13 07:30
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph by
AFLO
ちょっと前の話にはなるが、ハロウィーンの時に渋谷で起きたという事件をネットニュースで見てとても驚いた。軽トラを横転させその上に乗り……、というなんともみっともない事件だった。
そんな事件などなくてもあの渋谷の人出にも驚かされたのだが、ドイツからインターネット越しにみるその写真や情報は、まるで日本ではないように見えた。あの手の大群衆とそれゆえの匿名性に乗じた暴力沙汰は、どこか海外のサッカー場で起こることだというイメージだ。
フーリガンと呼ばれる暴力的なサポーターがいるからサッカー場は怖いところで、女性や子供は気をつけるべきという注意喚起もなされていたように思う。だが、いつからかフーリガンという言葉さえ聞かなくなったような気もする。スタジアムは安全で健全になった気がするが実際のところはどうなのか。
発炎筒はよくあるが……。
最近、スタジアムで暴力沙汰を目にしたのは10月27日だった。ドルトムントで行われた、ドルトムント対ヘルタ戦の試合中のことだ。
どのスタジアムでも、試合開始ごろに主にアウェイサポーターが発煙筒を焚くのはよくあること。面白いもので、応援するクラブのスタジアムではあまりやらないことを他所ではやるものだ。
発煙筒というのは、火をつけて煙が出始めた直後だけは、様々な色がついて一瞬キレイな気もする。だが、ものの数秒でそれらは普通の灰色から白色の煙になり、離れていても目や鼻を刺激される。白くなり拡散されて行く間にピッチに煙が到達し、選手たちの視界を遮り少しの間試合が中断することもある。
この日悪事を働いたのは“ハウプトシュタット(首都)マフィア”と名乗るヘルタの熱狂的ファン、ウルトラスだった。
彼らの15周年を祝うバナーを警察が取り上げようとしたことが発端となった。彼らはバナーの陰に発煙筒を隠していると警察は見ており、暴行を予防するためバナーを取り上げようとしたのだった。
発煙筒自体が試合に影響することはなかったが、試合が進むのと同時に周囲で警戒する警官隊に挑発を始めた。“首都マフィア”グループはフラッグ用の長い棒を振り回したり暴力を働く。次第にその棒や素手で警官を直接殴り、スタンドの目線は試合ではなく、その一角に注がれた。