欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
サッカーと暴動は切り離せるか。
ドルトムントの「45人負傷事件」。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byAFLO
posted2018/11/13 07:30
世界一多くのサポーターを抱えると言われるドルトムント。この熱量を適切な方向に向けることはできるだろうか。
警官5人を含む45人の負傷者。
ハーフタイムを経て後半が開始されると、彼らの座っていたあたりは空席になっていた。暴徒化したサポーターたちは退場させられたのかと思ったが、ぞろぞろと遅れて入場してきた。そのハーフタイムには、覆面をした者によってスタジアムのトイレが壊されるなどしていたそうだ。
結局45人の負傷者が出て、そのうちの35人がペッパースプレーによるもので、10人が暴力によって負傷したとドルトムント警察は発表している。その中には、警官も5人含まれている。
彼らヘルタウルトラスはこの14カ月で問題を起こしたのは8度目だという。この件に関するリーグからの処罰はまだ下ってはいないが、8月のドイツ杯1回戦、ブラウンシュバイク戦での発煙筒使用に対しては2万8000ユーロの罰金がクラブに科されている。
こうした暴力行為、迷惑行為を防止するためにクラブへの罰金はあるし、スタジアム入場者へのボディチェックも行われるのだが、過激派たちは止まる気配がない。
3年間アウェイ席が無観客に?
9月22日にはドルトムントファンも、ホッフェンハイム戦で相手チームの出資者ディートマー・ホップを侮辱するチャントを行い、バナーを掲出。その件で、ドルトムントのヴァツケCEOは9月23日付で公式に謝罪している。
11月3日、DFBスポーツ裁判所は5万ユーロの罰金と、2022年までドルトムントサポーターはホッフェンハイムでの試合には入れない決定を下した。サポーターの入場に関しては執行猶予という形で緩和されたが、次に同様のことを起こせば3年間はドルトムントファンはホッフェンハイムのスタジアムには入れないことになる。
つまり3シーズンの間、アウェイ席だけが無観客の状態で試合が開催されることになる。また、ドルトムントは'21-'22シーズンまでホッフェンハイムで行われる全試合に最低でも50人のセキュリティスタッフを配備することを命じられ、さらに横断幕やフラッグの類は、ホームであれアウェイであれ禁止されることになった。
これには伏線があり、今年5月にドルトムントファンがホッフェンハイムのホップ会長を侮辱するチャントやプラカードの掲出をしており、ホップはすでに32人を刑事告訴していたのだ。ドルトムントサポーターの過激派は'08年からホップを敵対視しているそうだ。
地元のIT系実業家であり、ホッフェンハイムを立て直すために大型の資金援助を行なったホップがどうにもこうにも気に入らないようで、試合のたびに揉め事になる。