第95回箱根駅伝(2019)BACK NUMBER
出雲&全日本から読む箱根駅伝。
「一強」青学大を脅かすのはどこだ。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byShunsuke Mizukami
posted2018/11/08 11:00
全日本大学駅伝でゴールする青学大・アンカーの梶谷瑠哉。「一強」を崩すチームはあるか。
東洋大で期待の「三本の矢」。
中でも東洋大は、「三本の矢」がしっかりと揃えば、エース区間では青学大に見劣りすることはない。その三本とは、山本修二(4年)、相澤晃(3年)、西山和弥(2年)の3人。酒井監督はいう。
「将来性もある3人ですから、『東洋大らしさ』を表現して欲しいです。先輩の柏原(竜二)のように、劣勢になったとしても絶対にあきらめない姿勢を走りで見せて、チームを盛り上げる存在になってくれると期待しています。監督の私としても、彼らをそのレベルに育てていかなければいけないと思っています」
打倒・青学大を現実のものとするには、山本、相澤、西山の3人がそれぞれの区間での直接対決で勝たなければ勝負にはならない。酒井監督は、あえて厳しいこともいう。
「優勝メンバーだった先輩たち、柏原、設楽啓太、悠太に比べれば、彼らもまだまだツメが甘いです。箱根までの残された時間で、どれだけ成長できるのか、私も彼らを信じてやっていきたいです」
三本の矢がまっすぐな軌道を描き、いぶし銀の走りを見せる主将の小笹椋(4年)、全日本を欠場した渡邉奏太(3年)、吉川洋次(2年)のふたりが戻ってくれば、陣容としては決して見劣りしない。
ただし、青学大に対抗するためにはコンディションが「万全」でなければならず、酒井監督の腕の見せどころとなるだろう。
東海大は箱根から五輪へ向かう。
全日本を盛り上げたのは、東海大だった。
東海大には独自の強化路線があり、全日本の3区で区間賞を獲得した館澤亨次(3年)は1500mのアジア大会代表だ。トラックの強化に注力しており、館澤だけでなく、他の選手たちも東京オリンピックの代表選考にきっと絡んでくるだろう。
箱根駅伝からオリンピックへ。トラックでの道筋を東海大の選手たちは目指している。
ただし、駅伝では距離が長くなればなるほど戦力的には厳しくなる。今季、出雲では3位になったことで、全日本は苦しいだろうと予想していたが、2区では關颯人(3年)が先頭に立つと、7区の途中までその座を守った。
全日本でたすきをつないだ顔ぶれを見ると、やはり選手層が厚い。
1区の西川雄一朗(区間4位)、2区の關(区間4位)、3区の館澤までは3年生でつなぎ、4区の西田壮志(2年)は関東インカレのハーフマラソンで4位入賞の実力者で、区間3位できっちりとまとめた。
5区の鬼塚翔太、6区の郡司陽大の3年生ふたりも青学大には差を詰められたものの、区間2位でしっかりとつないでいる。
両角速監督は全日本をこう振り返る。
「前半はいい流れが作れたと思います。5区の鬼塚のところで引き離していれば、また展開は変わったでしょうが、7区、8区の距離の長い区間で差が出てしまいました」
そのほかにも阪口竜平(3年)らの駅伝実績のある選手もおり、2年生の塩澤稀夕、名取燎太と高校時代から実績抜群の選手がそろっている。
ただし、青学大を倒すうえで絶対に欠かせないのは4年生の働きだ。全日本では7区を走った主将の湊谷春紀が、青学大の主将・森田に逆転された。そして8区アンカーの湯澤舜も、先頭を追うというよりも、3位から追い上げてきた東洋大を意識せざるを得ない展開になった。
長丁場の箱根駅伝では、4年生の力が必要不可欠である。湊谷、湯澤、そして三上嵩斗らの踏ん張りが東海大のレベルアップには欠かせない。