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レイデオロに天皇賞をもたらした、
藤沢和雄とルメールの“勝負勘”。 

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平松さとし

平松さとしSatoshi Hiramatsu

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photograph byKeiji Ishikawa

posted2018/11/02 16:30

レイデオロに天皇賞をもたらした、藤沢和雄とルメールの“勝負勘”。<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

10月28日、天皇賞(秋)の勝利を喜ぶ藤沢和雄調教師(左)とクリストフ・ルメール騎手。

遅い流れで冴えたルメール。

 同じく好手応えを感じたのが騎乗したクリストフ・ルメールだ。

「ドバイの時みたいに道中アングリーになってはコントロールが利かなくなります。それを思えばリラックスして走ってくれたので、最後の伸びにつながりました」

 そう言うと「むしろ勝負どころの反応が鈍かったくらい。叩いた事で次は変わってくれるでしょう」と続けた。

 そして、その次が天皇賞と発表されると、こう言った。

「ダービーを勝っている舞台。距離的にはむしろ(ダービーの2400mよりも)2000mの方が良いくらい。好勝負になるでしょう」

 これを受け、藤沢も言った。

「中距離戦なのに1ターンしかない東京の2000mは本当に誤魔化しようのない舞台設定だよね。スタート後の直線が長く速い流れになりやすいから言い訳無しの実力勝負になる。スピードも実力もあるレイデオロには絶好の舞台なんじゃないかな……」

 ところが競馬は生き物だ。今年の天皇賞は、蓋を開けてみると、思ったほどには流れない。1000mの通過ラップは59秒4。古馬のGIとしては明らかに遅い流れだ。12頭の少頭数となったのも流れが落ち着いた要因だろうが、ここで生きたのがルメールの勝負勘だ。

早めに動いて地力勝負。

 勝負“勘”といっても単なる当てずっぽうの“勘”ではない。彼の経験値から導かれる、体に染みついた“勘”とでも言おうか。それがダービー馬に指示を送る。早目に動く事によって、上がり勝負だけの競馬にならないように流れを変えたのだ。

 レイデオロはそれまで10戦、ラップの発表されないドバイを除いた9戦で、出走馬中最速の上がりを5回記録している。しかし、その数字は最も速くて34秒3。中には35秒7などという数字もある。逆に33秒台の脚で上がったのは1度だけ。

 それが日本ダービーで、この時は“神騎乗”と言われたルメールの手綱捌きで早目に進出。勝利をもぎ取ったが、同馬よりも速い上がりをマークした馬は実に7頭もいた。

 つまり、本質的にレイデオロは瞬発力の必要となる上がりだけの競馬に向いた馬ではないのだ。しかし、それは逆に言うと地力勝負に向いた馬であり、強い馬である事の証でもある。スローでラストだけの競馬にならぬ様、ルメールが自らレイデオロを、いや、レースを動かして行ったのだ。

【次ページ】 年齢での定年まで3年少々。

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