競馬PRESSBACK NUMBER
レイデオロに天皇賞をもたらした、
藤沢和雄とルメールの“勝負勘”。
posted2018/11/02 16:30
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph by
Keiji Ishikawa
67歳。定年まで3年少々となった藤沢和雄調教師が元気だ。
10月27、28日の2日間に計7頭の管理馬を出走させた伯楽は、レイデオロでの天皇賞(秋)制覇を含む計6勝をマークした。
1998年6月14日には東京競馬場で5頭を出走させその全てを1着。最後はタイキシャトルの安田記念勝ちでしめ、まさに黄金期といった感じだったが、今回のそれは当時を彷彿とさせる活躍ぶりであった。
特筆すべきは当然、天皇賞での優勝だろう。
この秋の大一番を迎えるにあたり、藤沢はレイデオロをオールカマーから始動させた。常日頃から「コーナーが少なく直線の長い東京コースは実力を発揮しやすいのに対し、中山はコーナーが多く、強い馬が取りこぼす事もあるトリッキーなコース」と口にする藤沢。しかし、あえて中山の2200mで始動させたのには理由があった。
100%の状態ではなくても。
「正直100%の状態というわけではありませんでした。くわえて中山コースという事で、誤解を恐れずに言えば結果よりも内容を求める競馬というつもりで臨みました」
内容を求め、結果によって次の1戦をどこにするか考える。そんな意味を持ったプレップレースだった。
そのオールカマーで昨年のダービー馬は目の覚めるような走りを披露する。
前半1000mの通過ラップが60秒5。完全に前が有利な流れで、終始2番手にいたアルアインが1度は抜け出してみせた。しかし、そこにただ1頭猛然と襲いかかり、最後はクビ差、かわしたのがレイデオロだった。
「レース前は少し気合いが乗り過ぎている感じはありました。あの感じではゲートが開いたら掛かって行ってしまうかとも思ったけど、実際には意外とノンビリ走ってくれました。イレ込んでどうしようもなくなるなんて事はない馬なので、ああやって走れるのだと思います」