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甲子園決勝は本当に明日でいいのか。
金足農業・吉田輝星の投球数が……。 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byHideki Sugiyama

posted2018/08/20 18:30

甲子園決勝は本当に明日でいいのか。金足農業・吉田輝星の投球数が……。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

吉田輝星が今大会最大のブレイク投手であることは間違いない。それだけに、末永く彼が野球を続ける姿が見たいのだ。

球数制限の障害は「不平等」。

 彼が今大会で投じた投球数は700球を超えた。秋田大会を含めると、おそらく1000球を超えているはずだ。たった1カ月余りでのこの投球数は限度を超えている。と同時に、登板間隔も試合を勝ちあがるたびに、短くなっている。17、8歳の高校生に課していいものではないだろう。

 球数制限などのルール化を推奨する声は多いが、日本高校野球連盟は二の足を踏んでいる。

 その理由は「不平等」が生じるからだ。

 日本高校野球連盟の竹中雅彦事務局長がタイブレークの導入を決めた際に、こんな話をしている。

「タイブレーク制度の導入は再試合の防止であって、投手の負担軽減のための次善策だと思っています。本腰を入れていくのであれば、投球回数制限、球数制限に踏み切ることが必要だなと思います。

 ただ、甲子園に出てくるような潤沢な部員数を誇る学校は一握りしかない。9人をそろえるのに必死な学校が多いんですね。そこにスポットをあてるべきだと思います。そういったチームのことを考えると、すぐに導入するのは難しい」

 確かに、球数制限は複数の投手を揃えることが難しい公立校には不利なのかもしれない。

 私学のように何人もの部員を抱えるキャパを有していないし、たとえたくさんの部員を獲得することができても、それを鍛え上げるだけの環境が整っている学校は少ない。高野連の言い分には一理あるのだ。

 しかし、では今の甲子園の日程は平等といえるのだろうか。

複数の投手を育てられない学校もある。

 決勝戦に進出した大阪桐蔭や、日大三、近江などのように複数投手を用意して戦いに挑むチームは増えている。高野連も複数投手制を推奨しており、公立校でも複数の投手を育てるべきだという意見は分かるが、全チームにそれが現実的だろうか。

 そもそも、高校野球の年間スケジュールが複数投手の育成を促す環境になっていない。

 周知のように、高校野球の多くの大会はトーナメント制で行われている。一発勝負ではない大会もあることはあるが、勝ったり負けたりを繰り返しながら成長していく、という状況ではない。

 負けられない試合が続けば、複数の投手を育てるのは容易ではない。

【次ページ】 負けたら終わりでは、エースを下げづらい。

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