野球善哉BACK NUMBER
甲子園決勝は本当に明日でいいのか。
金足農業・吉田輝星の投球数が……。
posted2018/08/20 18:30
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Hideki Sugiyama
過去に何度も見た光景だった。
表現としては“末恐ろしいピッチャー”だ。
秋田県大会からすべてのイニングを1人で投げぬいている金足農のエース・吉田輝星がまた、快投を見せた。
準決勝の日大三戦では、2点を先行すると、そのアドバンテージを最大限に生かすピッチングを展開。ピンチに陥ってもしっかりと間を取り、走者のスタートを一歩ずつ遅らせ、打者に対しては変化球を低めにコントロールして、ギアを上げたストレートで強力打線を黙らせた。
5試合連続完投勝利は見事というしかない。
限界を超えていてもおかしくない心身の状態でありながら、それでも快投をみせる。
しかし、吉田のような投手をみたのは過去に1度や2度ではない。
「投げないという選択肢はなかった」
2006年の斎藤佑樹(早稲田実)しかり、2008年の戸狩聡希(常葉菊川)、2010年の島袋洋奨(興南)、2013年の高橋光成(前橋育英)……。筆者が取材現場に立つ以前では、松坂大輔(横浜)、本橋雅央(天理)、大野倫(沖縄水産)などもいた。
彼らはどんな苦境であっても、最高のパフォーマンスを見せたものだった。
連投を重ねた後でもストレートは最速に近い球速をマークし、変化球は低めに決まった。甲子園という舞台を前にして、彼らは出場を避けることはしなかったし、どこからそんな力が湧き出てくるのか、というピッチングをした。
「投げないという選択肢は僕の中にはなかったです。なぜって、なんでこの日まで練習したのか。優勝するためにやって来たんですからね」
今から10数年前、そう語っていたのは天理の本橋さんだった。
甲子園という舞台では、そう思わざるを得ないというのが球児の心理だろう。
しかし……話を吉田に戻すと、投げすぎだ。