野球善哉BACK NUMBER
エース依存から一歩踏み出した済美。
「きょうの池内は頼もしくて」
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/08/18 17:00
済美のエースが山口直哉であることは変わらない。それでも、後ろに頼れる投手がいることは大切なのだ。
「きょうの池内は頼もしくて」
池内の不安が払しょくされたのは、この試合の先頭バッター小園海斗を抑えたときだ。小園は今大会注目のバッターの1人であり、その彼を抑えたことで前を向けたと池内は語る。
「1回を抑えて勢いに乗るというのはよくありますが、今日は1番の小園君を抑えて行けるかなと思えました。やはり良いバッターを打ち取ることができたので、『いけるぞ』とスイッチが入りました」
ストレートの最速は144キロを計測し、フォークもさえた。コンビネーションがよく、5回途中まで1失点は好投といえる。
県大会から一度もなかった池内―山口直の継投での勝利。この試合の意味は大きいと、中矢監督はいう。
「県大会までは池内の不安というより、負けられない戦いの中で山口の安定感を優先していました。甲子園にきて優勝するためには、池内に3回~5回を投げてほしいという想いがあり先発をさせました。今日は上手く継投も決まって、勝つことができた。
1日おいて、準決勝、決勝に向けていいスタンバイができると思います。きょうの池内は頼もしくて、ストレートが144キロも出ていた。今後の起用も考えていきたい」
池内に自信がなかったのは、これまで実戦の機会がなかったからに他ならない。しかし、こうして思い切った起用をしてみると新たな世界が見えることもあるのである。
ピッチャーは実戦で投げる経験が大切。
140キロを超える投手を複数揃えて、済美とともにベスト4に進出した日大三の小倉全由監督がこんな話をしていた。
「やっぱりピッチャーは投げての経験が大事ですね。ブルペンでどれだけいいボールを投げていても、バッターと相対して、打たれて反省して、いい結果が出て自信になっていく。その繰り返しだと思います。時には打たれて、上手くいかないことも経験して大きくなっていくんだと思います」