野球善哉BACK NUMBER
エース依存から一歩踏み出した済美。
「きょうの池内は頼もしくて」
posted2018/08/18 17:00
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Hideki Sugiyama
ようやく抜け出した。
指揮官も、そして、起用された選手も。
踏み出した先には、新しい世界が見えたに違いない。
愛媛県代表の済美がベスト4進出を決めた。地元・東兵庫代表の報徳学園に対する3-2の僅差勝利に繋がったのは、まぎれもなく、この夏、初めて公式戦のマウンドに立った、背番号「5」の池内優一だった。
「前日の練習前に監督から伝えられました。情報が伝わってはいけないので、黙ってはいました。自分的にも嬉しいですけど、チームが勝てたのが一番です」
先発した池内は4回3分の1を1失点。それまで県大会から全イニングを投げ続けてきたエース山口直哉の疲労を軽減する活躍を見せたのだった。
池内は「ほんとですか」という顔つき。
とはいえ、この選択は決して簡単なものではなかった。済美・中矢太監督は、試合前日の練習のエピソードを明かす。
「山口と池内を呼び出して私の考えを話したんですが、山口の方は『僕が行きたい、先発完投したい』という反応でしたが、池内は『ほんとですか』という顔つきでびっくりしていました。池内は『行きます』といいながら、不安そうでした」
池内の気持ちは分からないでもない。
彼にとって公式戦マウンドは春の大会以来で、練習試合にしてもこの夏の愛媛大会前の事なのだ。1カ月登板がない状況に不安が募るのは当然の事だろう。
山口直は184球の完投勝利を挙げた2回戦の星稜戦のあと、池内はこんなことを話していた。
「今日は延長に入ってから準備はしていました。練習でもブルペンに入っていますし、登板できる準備はしています。でも、山口の疲労を考慮して自分から『投げさせてください』と直訴するかと言ったら、その自信はないかもしれないです」