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日本一過酷な山岳レースTJARで、
絶対王者の消防士が挑む「無補給」。
text by
千葉弓子Yumiko Chiba
photograph bySho Fujimaki
posted2018/08/12 00:00
前回2016年のトランスジャパンアルプスレースで、4連覇を達成した望月将悟。
全行程の食料で重量は倍以上に。
TJARの完走には、装備の「軽量化」が大きな鍵を握る。
本番までに、選手はさまざまな道具を試し、自らの行動スタイルにあった装備を絞り込み、厳選していく。
少しでも軽い方が体にかかる負担が少ないため、ザックや簡易テントなど山岳用品を吟味するのはもちろんのこと、食料をパッケージから出してビニール袋に詰め替えたり、ウェアについている洗濯表示のタグを切ったりと、あらゆる工夫をこらす。
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もちろん、これまで望月もそうした工夫をこらしてきたし、今回も軽量化を目指している。だが、「全行程分の食料」の重みが加わり、装備重量はこれまでの倍以上の15kg程度となる。
荷物が重ければ重いほど、心拍数は上下動しやすいといわれている。心拍数の上下動は疲労に大きく関与する。日頃の消防活動では約20kgの装備を装着し、山岳救助では要救助者を担ぐ望月だが、415kmもの超長距離となれば話は別だ。
途中で補充するのは水のみ(自販機などは使わない)。エネルギーの枯渇は絶対に避けなければならないが、重さは1gでも軽くしたい。装備の選択には、ギリギリのせめぎ合いがあったことが想像できる。
「山で本当に強い人間になりたい」
望月にはこんな想いもあった。いま、日本の山岳シーンでは「いかに軽量にするか」が注目されつつあり、ややもすると自身の山の知識やスキル以上に装備を削ってしまう登山者やトレイルランナーがいる。「どんなに経験豊かな登山者であっても、山で100%の安全安心はない」という事実を、望月は身をもって知っている。だからこそ、山岳救助のプロとして、山岳アスリートとして伝えたいこと、目指したい姿がある。
「山で本当に強い人間になりたい」
8月12日午前0時、2018年の『トランスジャパンアルプスレース』が幕を開ける。山における真の強さとは何なのか……。その答えを探すために、王者が無補給でスタートした。