福西崇史の「考えるサッカー」BACK NUMBER
「W杯でのスタイルが強豪への道」
福西崇史が確信した日本の戦い方。
text by
福西崇史Takashi Fukunishi
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2018/07/04 17:30
ベルギーをギリギリまで追い詰めた日本の戦いは世界中から賞賛された。この道の先に、光は確かに見えている。
相手を見て戦い方を変える、という宿題。
今大会を評価する大きなポイントとして、4年前のブラジル大会で突きつけられた「対戦相手を見た上で、どう戦っていくのか」をクリアしたことがあると思います。
ブラジル大会では自分たちがボールを保持し、主導権を握ってゲームを進めるスタイルで挑みました。しかし相手の采配や、引いて守る陣形に対して変化をつけられず、グループリーグ敗退となりました。
そこで求められたのは、相手がどんな意図を持っているのかを読んだ上で、攻守に連動することでした。
守備面では無失点で終える試合こそありませんでしたが、前からプレスをかけに行くべきタイミング、後ろで手堅くブロックを作る時間帯の使い分けで、意志がバラバラになることがほとんどなかった。横や縦へのスライドも乱れる場面は少なかったです。
例えばベルギー戦は前半から押されていましたが、アザールら相手の攻撃のキーマンに「使われたら嫌だな」というスペースを確実に消していた。またシュートブロック1つでもしっかりと見極めて、体に当てたりコースを限定したりといったプレーを確実にこなした。こういった基本的な部分も常に意識できていました。
攻撃のバリエーション、スイッチも機能した。
攻撃でもバリエーションが豊富でした。4試合で6ゴールという結果が何より証明していますよね。これは「攻撃のスイッチ」を全員が意識できていたからこそです。
ボランチに定着した柴崎がゲームを作る役割を果たし、また吉田や昌子といった最終ラインの選手も含めて、ボールを奪ってから勇気を持って縦パスを入れられるようになったのも大きかったです。
彼らのパスに対して大迫がポストで受けたり、香川が相手ブロックの間に入り込んで攻撃を連続させられた。また原口と乾の両サイドハーフも、ピッチの内と外の使い分けの巧みさが増しました。相手の守備陣形を見て崩しどころを見つける判断は、以前よりも向上したのではないでしょうか。
ベルギー戦でカウンターから原口が奪ったゴールは、攻めに出たベルギーの最終ラインの裏を狙った結果でしたからね。