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松坂大輔が“勝てる投手”である理由。
小倉元部長に育まれた横浜高の遺伝子。
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byKyodo News
posted2018/05/10 08:00
横浜高の卒業式で小倉部長(中央左)らとともに記念撮影をする松坂(中央)。西武ライオンズでは高卒1年目から16勝を挙げた。
松坂も涌井もノックで仕込まれた。
それだけでなく「小倉ノート」で広く知られているように、ライバル校の分析も超一流だった同氏からは、速球と変化球のフォームにクセが出ないこと、強弱をつけた牽制球、バント処理、フィールディングなどを徹底的に仕込まれた。小倉氏の「オレが育てた」という言葉が決して誇張ではない最大の理由は、このノックにあると思う。
「これもプロに入ってから思ったことなんですが、僕は投げる以外のことであまり困ったことがないんです。よくいるじゃないですか。いいボール投げんのになあってピッチャーが。守備だったり牽制だったりがおろそかになると、勝てる試合を勝てなかったりしますからね。そういう点では涌井なんかも同じですよね」
横浜高出身は現在最多の18人。
こう話す松坂は、MLB挑戦前(西武)の8年間で、実に7度(1999~2001、2003~2006)もゴールデングラブ賞を受賞している。
そして名前を出した涌井秀章(ロッテ)も4度(2009~2010、2015~2016)選出されている。涌井の牽制球のターンは、野球界では屈指の速さを誇っている。横浜高のエースであり、その後にプロへと進むような逸材なら、「投げる」ができるのは当たり前。それ以外のことでも一流であってこそ、素質は花開く。小倉門下生で11度のゴールデングラブ賞というのは、決して偶然ではないはずだ。
ところで横浜高出身の現役プロ野球選手が何人いるかご存じだろうか? 答えは18人。これは高校別では最多である。
最年長は卒業から20年目の松坂と後藤武敏(DeNA)。最年少はルーキーの増田珠(ソフトバンク)。その遺伝子は松坂世代から後輩へと受け継がれているようだ。出身地の宮崎県から越境入学するのに強い影響を受けた松坂と、今季からチームメートになった柳裕也も牽制球の速さでは球界指折りと言われている。
「僕のときには部長ではなくコーチでしたが、本当に厳しく鍛えていただきました。ピッチャーは投げるだけじゃないんだよとも言われましたし、横浜の先輩たちに守備や牽制が上手な投手が多いのは偶然ではないと思います」(柳)