話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
神戸・吉田監督が掲げた“バルサ化”。
主力が去ったチームの再建状況は?
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byAFLO
posted2018/02/22 16:30
2017年は巨大補強で優勝候補とも言われたが、終わってみれば9位。今年こそACL出場の目標は逃せない。
バルサスタイルにウェリントン?!
新加入で気になったのは、前線のウェリントンだ。
バルサのサッカーを標榜するのであれば当然、足元のうまさが前線の選手にも求められる。だがウェリントンは、福岡ではサイドからのクロスをドカンと一発で決めるタイプだった。果たして、バルサスタイルのトップとして、馴染むのだろうか。
「そこは馴染むのには、時間が必要かなと思います。実際、足元でつなぐ時に彼はあまりうまくないので、ちょっと戸惑っている。ボールロストも多い。走れるし、身体が強いけど、頭を使って走るタイプではなく、がむしゃらに走るタイプ。
でも、そういう選手も必要。いきなりバルサをやれって言われても、そこは現実的にやっていかないといけない。だから、いろんなタイプの選手がいてくれた方がチームとしては助かるんですよ」
昨年の堅守速攻型からバルサスタイルへの転換は、キャンプからスタートした。ポゼッションを意識したパス練習を増やしてきたという。
「キャンプではパスを出したら、ちょっとでもアングルを取ってサポートするとか、ボールを奪われたらすぐに奪い返しにいくところの意識づけをしました。
ただ、そうした新しいこと、たとえば『前から奪いに行くぞ』というと選手はそれを意識して、行き過ぎてしまう。うしろが来てないのに前だけが動いていたりするんですよ。それで今までの神戸の良さである堅守のバランスが崩れることがあるんで、そこはうまくバランスを取らないといけないですね」
時間はかかるが、勝ち星も必要。
開幕までは意識づけを徹底しつつ、バランスを整える作業がつづく。言葉に踊らされない吉田の視線は極めて冷静だ。
「バルサのスタイルがそんなに簡単に完成できたら、みんなやっていますからね。やっぱりスタイルを確立するのは簡単じゃない。川崎だって風間さんの時代からずっとやってきて今があるし、広島もペトロビッチが土台をつくって森保さんが完成させた。長い時間と忍耐が必要。
だから、ただスタイルを追い求めるのではなく、勝ち星を拾いながら自信をつけて徐々にやっていく。一気に変えると拒否反応が出て、うまくいかなくなるんで」