オリンピックへの道BACK NUMBER
目標はおかず、日々少しでも上を。
初の五輪でも貫いた宇野昌磨らしさ。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2018/02/18 12:00
フリーの演技の最初の4回転ループで失敗して「笑いが込み上げた」と語った宇野。それ以降安定した演技で銀に輝いた。
羽生とフェルナンデスとの抱擁についても。
宇野の場合、ゴールを描くことなく、今日よりも明日、少しでも上達していればいい、と考えているかのようだ。でもそれが宇野にとっての正解なのだ。平昌五輪での、ショート、フリーを通じての演技と結果は、それを物語っているし、常にナチュラルでいられる理由でもある。
試合が終わったあと、羽生、フェルナンデス、そこに宇野も加わって抱き合う場面があった。そのときの心境を聞かれて、こう答えた。
「英語が分からないので、分からなかったです。同じクラブだからなのかなとか、ハビエル選手がもう現役は長くないからかなとか考えながら、僕も一緒に抱き合いはしました。でも、何を言っているのか分からなかったです」
それもまた、宇野らしい答えだった。
団体戦のショートプログラム、そして個人戦のショート、フリーと、宇野はスタンスを貫いて、初めてのオリンピックを終えた。その中で得た銀メダルは、宇野ならではのアプローチの成果であり、ただひたすら向上だけを志すその先の可能性も感じさせるものだった。
宇野昌磨は、オリンピックでも、宇野昌磨だった。