オリンピックへの道BACK NUMBER
目標はおかず、日々少しでも上を。
初の五輪でも貫いた宇野昌磨らしさ。
posted2018/02/18 12:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
2月17日、フリーを滑り終えた宇野昌磨は、穏やかな表情で、淡々と語った。
「滑り出しからぜんぜんよくなかったのでどうなるかなと思ったけれど、悪い中でもワンミス以内におさえるという練習はいきたんじゃないかなと思いました」
前日のショートプログラムは104.17で3位。
「明日は笑顔で終わりたい」という思いで迎えたフリーは「嫌でした」と言う最終滑走。羽生結弦、ハビエル・フェルナンデスのあとを受けてリンクに立った宇野は、冒頭、4回転ループで転倒する。
ただ、ミスはその1つだけだった。続く4回転フリップを成功させると、以降、大きなミスのない安定した演技を見せる。
終わってみれば、202.73点、総合得点は306.90で、銀メダルをつかみとった。
コンディションは決してよくなかったという。朝の公式練習でも、あまりジャンプを跳ばずに終えた。
「昨日の疲れと、朝早いということで単純に体が動かなかったです」
また、こうも語る。
「今日のコンディションでは、いい演技だったと思います」
オリンピックは特別な場所ではない。
ショートが終わったあとは、高揚から身体が動きすぎるのを抑えようと努めたと語っていたが、初めてのオリンピックだからこその緊張もあったのか。
だが宇野自身は、それを否定する。
「オリンピックに最後まで特別なものは感じなかったです。これまででいちばん樋口(美穂子)先生が喜んでいたので、それはうれしく思ったんですけど、ほかの試合での銀メダルとあまり違いを感じなかったです」
演技終了後の羽生の姿を見てどう感じたか、と問われると、こう答えた。
「羽生選手にとって特別な場所なんだなという思いはあったんですけど、僕自身には特別な思いはなかった。オリンピックだけを目指してやってきたわけではないので、1つの試合でした」