野球のぼせもんBACK NUMBER
SB千賀が「これはヤバい」と絶賛。
158km左腕・川原弘之がオフに変貌。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKotaro Tajiri
posted2018/02/05 11:30
最後列中央、グレーのネックウォーマーを付けているのが千賀、その2人右に写っているのが川原。最前列には上野由岐子の姿も。上野の左が鴻江トレーナー。
軸足に体重を乗せてはいけない?!
川原は猫背型の左腕だ。投球の際の進行方向は右になる。強い右半身を体の軸にしなければ、バランスを崩すことになる。
しかし、それまでの川原の意識は逆だった。よくある間違いだ。左投手は右足を上げる。地面についている左足側でぐっと溜めて投げにいくイメージをしがちになる。
ただ、体の弱い方でバランスを取ろうとしても上手くはいかない。結果的に左腕に力を込めて、投げる為のタイミングに無理に合わせにいく。だから負担が増して故障に繋がる。
ADVERTISEMENT
川原は、フォームをイチから見直した。
「踏み出す右足の方の骨盤が閉じているタイプ。そのために下半身でリードしていかなければならない」(鴻江氏)
右足は開かずに横を向けたまま投げることを意識する。また、人間は体が背中側に反りかえると力が伝わらなくなるため、それを防ぐために右足首を立てた状態にすることも重要なポイントだと教わった。
リリースポイントも驚くほど打者寄りに。
鴻江氏は、川原の投球フォームについてこう語る。
「一見するとインステップで投げているように見えますが、それが川原投手にとっては真っ直ぐ足を踏み出したことになる。また、上半身が反りかえらないように意識をし、自然に左腕を振るので、スリークォーターもしくはサイドスローのような投げ方に見えます」
肘が下がっているという指摘は、じつはナンセンス。体のバランスから見れば、正常な肘の位置なのだ。これを無理に上げようとすれば、また故障につながる恐れもある。
実際に川原も十分な手応えを感じている。
「体が一塁側を向いている時間が長くなりました。つまり開きが遅くなったということ。腕の位置は下がったかもしれませんが、手首が立っていて、球離れも断然良くなりました。何より自主トレ合宿では映像を撮ってもらって動作解析をするのですが、リリースポイントも驚くほど打者寄りになっていました。
僕はもともと自分のフォームを映像で見るのが好きじゃなかった。変に考え込んでしまいそうで……。だけど、合宿では鴻江トレーナーをはじめ一緒に練習する千賀たちもみんなで映像を見るので、率直な意見も聞くことが出来ます。そのおかげで自分の中で確信を持つことも出来ました」