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坂本花織と三原舞依が互いを語る。
彼女たちもまた「最強のふたり」だ。
text by
稲田修一(Number編集部)Shuichi Inada
photograph byAsami Enomoto
posted2018/02/05 07:00
坂本花織(左)と、三原舞依(右)、平昌五輪では明暗分かれたが、彼女たちの輝かしいキャリアはこれからも続いていく。
五輪発表の瞬間、部屋には三原もいた。
フィギュアスケーターは孤独である。氷上に立ったら、誰の助けも借りることができず、途中で演技をやめることもできない。ミスをしたらその場で瞬時に判断して、リカバリーのために演技の構成を変えたりもする。
まだ17歳の坂本は、さまざまな困難や重圧に押しつぶされそうになりながらも、持ち前のポジティブさを武器に、ひとつひとつ壁を乗り越えていった。
そして、三原の存在も大きな支えになっていた。日々、ともに練習し、互いが出場する試合の際にはSNSでメッセージを交換して、励ましあっていたという。
だからこそ、全日本選手権が終わり、五輪代表が発表される瞬間、嬉しさを弾けさせることはできなかった。同じ部屋に三原も一緒にいたからだ。
「舞依ちゃんのことは、直視できなかったです」と複雑な胸のうちを明かしてくれた。そして、「舞依ちゃんがいたから、私がいると思います」と、感謝の気持ちをはっきりと語った。天真爛漫な明るいキャラクターでありながらも、繊細さと優しさが言葉の端々からにじみ出ていた。
写真撮影の際、「五輪への強い決意を感じる、真剣な表情を」とリクエストしても、どうしても顔がほころんでしまう。「真面目な顔、できないんですー。どうしても笑っちゃう」と苦労していた。坂本はやはり、笑顔が似合う。ナンバー本誌では彼女らしさあふれる、満面の笑顔のカットを選んだ。
前髪を20cmほど切って登場した三原。
続いてインタビューに応じた三原は、前髪を20cmほどバッサリと切っていた。
「パッツンにしたことはなかったので新鮮です。心機一転で切ろうかなと」
春からは女子大生となる。一気に大人っぽく、イメージチェンジしていた。
昨シーズンにシニアデビューした三原は、全日本選手権で銅メダル、四大陸選手権で初優勝、そして世界選手権でも5位と快進撃を見せた。難病を克服し、スケートができる嬉しさを全身で表現しながらパーフェクトな演技を見せる姿から、「シンデレラガール」と呼ばれ、平昌五輪代表の有力候補と目されていた。
しかし、今シーズンはショートプログラムに最後まで苦しんだ。『リベルタンゴ』は大人の女性の心理を表現するプログラム。難易度も高く、代名詞でもあった「ノーミス」で滑りきることがなかなかできなかった。一方、フリーの『ガブリエルのオーボエ』は三原の代表作ともなるような美しいプログラムで、完璧な仕上がりを見せていた。
結果、今シーズンはショートのミスをフリーで巻き返すという試合展開が続く。グランプリシリーズの中国杯ではショート7位、フリー3位で総合4位、フランス大会はショート4位、フリー5位で総合4位。そして猛練習を重ねて挑んだ全日本選手権でも、ショートで7位と出遅れ、フリーは圧巻の演技を見せて3位に入るも、総合5位となって五輪代表の切符をつかめなかった。