猛牛のささやきBACK NUMBER
イチローも打席で意識する“利き目”。
オリ伊藤光の目に起こった変化とは。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2018/01/27 11:30
普段の生活では意識しない「利き目」だが、実は多くの場面で人の動きに影響を与えている。アスリートならばなおさらだ。
イチローのルーティンも利き目を合わせるため。
その変化を踏まえて、このオフは右目でボールを捉えやすくするためのルーティン作りに取り組んできた。慣れるまでは左目を閉じたり手で隠して、利き目である右目でピントを合わせやすくする。
「イチローさんも、打席で行うあのルーティンで利き目を合わせている。自分もそういうふうに、右目に合わせるルーティンを作ろうとしています」
その他、構えている間は息を止めずに呼吸をするなど、田村氏からは目と呼吸の連動も教わった。それらを意識することで、「秋季練習からすごくいい感覚でできている」と手応えをにじませた。
田村氏はこう付け加える。
「利き目が変わるというのはあくまでも表面的なことであって、それだけの問題ではありません。彼は目と体がバラバラで統合されていなかったんですが、本人がそれに気づいて、非常に感度がよくなっている。今シーズンはやると思いますよ」
「10年目には正捕手で優勝して、と思ってた」
28歳の伊藤は今年、プロ11年目を迎えた。
「これまでの10年は、入団時に自分が思い描いていたものとは全然違った。10年目にはもう既に(正捕手を)しっかりつかんで、チームも勝っているというのを描いていたけど、優勝もしていないし、確実にレギュラーと言われる状況でもない」ともどかしそうに言う。
だからこそ11年目の今年は、何かを変えたい、新境地を開きたいという思いがあり、新しいことに取り組んできた。初めて中島宏之と一緒にロサンゼルスの施設で自主トレをしたのも、田村氏を訪ねたのもその1つだ。
田村氏のもとには、オリックス在籍時のイチローや、福岡ソフトバンクの内川聖一、横浜DeNAの筒香嘉智、埼玉西武の菊池雄星といったトップ選手たちが数多く通い、見事に結果を出している。
「同じ気を持った人が自然と集まるんだという話を聞いたことがあって、自分もそういうトップの人が集まるところに行ってみたいと思った時に、浮かんだのが田村先生でした」と伊藤は言う。
「先生には、『気づくの遅いよ』って言われました(笑)。もっと早く気づいていればな、とは思いましたけど、でも古田(敦也)さんだって30歳からあれだけ活躍されたし、矢野(燿大)さんもそう。あれほど活躍されたキャッチャーでも(正捕手をつかむまでに)時間がかかったんだと思えば、僕もまだ遅くないと思う」