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イチローも打席で意識する“利き目”。
オリ伊藤光の目に起こった変化とは。
posted2018/01/27 11:30
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Kyodo News
「早くシーズンが始まってほしいですね」
昨年12月の契約更改後の記者会見で、伊藤光は言った。はやくも開幕が待ち遠しくなるほど、コンディションに手応えを感じていた。
2017年の伊藤は、103試合に出場した。'16年の80試合から増加し、オリックスの捕手の中では最多だが、シーズン序盤はサードやファーストでの起用も多かった。打撃力を買われての起用だったが、昨年はその打撃が打率.189と不調に終わった。
シーズン中、伊藤は打席で違和感を感じていたと言う。
「構える時に知らないうちに体が開いていたり、スイングしても、本来なら届いているはずなのに、当たるはずなのに、なんだろな? ということが多かった。変化球が抜けてきたボールがすごく怖く見えたり、ボールが一瞬消えるみたいな感じもありました。それに小さな怪我が増えてきて、自分の体に何か変化がおきているのかなと思っていました」
オフシーズンになってその原因がわかった。利き目が変わっていたのだ。
「僕はずっと左目が利き目だったんですけど、それが右目に変わっていたんです」
以前から関わりのあった視覚情報センターのスポーツビジョントレーナー田村知則氏のもとで調べたところ、判明したと言う。
知らないうちに利き目が左から右に……。
右打者の伊藤は、以前は投手に近い方の目、左目でボールを捉えていたが、知らないうちに利き目が変わり、投手から遠い方の右目でボールを捉えようとしたために、自然と体が開いていたのだ。
「そういうことを知れたのがまずよかったです。そりゃ同じことをしていても打てないなと。それで体の使い方も変わって、細かい怪我が増えていたのかなと納得しました。それだけが原因ではないと思いますが、1つのヒントだと思います」
田村氏に聞いたところ、利き目が変わることは「頻繁にあることではない」と言う。
「原因としては、読んだり書いたりすることが増えたり、両目の視力に差が出てくると利き目が変わることはあります。彼の場合は、(一点に目が)集中しすぎる傾向があるので、それが原因ではないでしょうか」