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プロ野球、最多観客動員の裏で……。
「野球離れ」を裏付ける恐怖の数字。 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byHideki Sugiyama

posted2018/01/26 11:30

プロ野球、最多観客動員の裏で……。「野球離れ」を裏付ける恐怖の数字。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

広島カープは真っ赤に染まるマツダスタジアムのイメージが強いが、ビジターでの集客力も最強なのだ。

ホーム球場「以外」の観客数で、全国的な人気がわかる。

 もう1つ、観客動員にかかわる数字がある。これを見ると、今のプロ野球人気のからくりが良くわかる。

 先ほどの表は、各球団の主催試合の観客動員数だ。これとは逆にロードゲーム、つまり相手主催試合での観客動員と動員率の表を作った。

<2017年ロードゲームでの観客動員数、動員率>

広島     237万8140人 89.3%
DeNA     235万0119人 85.9%
阪神     227万9570人 90.5%
巨人     225万1901人 88.2%
ヤクルト   220万8669人 86.1%
中日     218万0111人 84.3%
日本ハム   195万5922人 81.9%
西武     194万3185人 76.9%
オリックス  192万9871人 79.1%
ロッテ    190万6724人 74.3%
楽天     188万2651人 73.7%
ソフトバンク 187万2600人 76.9%
パ・リーグ  1149万0953人 77.1%
セ・リーグ  1364万8510人 87.4%
全体     2513万9463人 82.3%

 なんと、広島がロードの観客動員では1位、動員率でも阪神に次いで2位。広島相手の試合は、今一番お客が入る黄金カードなのだ。

 広島は「カープ女子」という言葉ができた2013年から、首都圏でキャンペーンを展開した。2014年には新幹線代を球団が負担して、首都圏のカープ女子をマツダスタジアムに招待して話題を呼んだ。

 今、東京ドームの巨人-広島戦や、甲子園の阪神-広島戦では左翼スタンドが真っ赤になっている。カープ人気は全国区になったのだ。

 主催試合は90%を越して飽和気味になっているが、他球団の主催試合でも、広島の試合になるとファンが押し寄せるのだ。

 昭和の時代、このデータを出せばおそらく巨人がひとり勝ちだっただろう。巨人は今も人気球団ではあるが、今では広島、DeNA、阪神などに肩を並べられているのだ。

ソフトバンクはホームではパで1位、ロードでは最下位。

 もう1つ気になるのが、パ・リーグの6球団の数字が軒並み低いことだ。

 観客動員の実数発表が始まった2005年、セは1167万2571人、パは825万2042人。比率はセの71%だった。それが昨年はセ1402万4019人、パ1111万5444人。セの79%まで追いついた。

 この間、パの各球団はエリア・マーケティングに徹した。とにかく地元の人をファンにしようと奮闘した。努力が実を結んで観客動員は増加し、地域にロイヤリティが高いファン層ができた。

 しかし全国区の人気では、昔から人気があり、知名度で勝るセ・リーグ球団に届いていない、ということなのだ。札幌の日本ハムから、福岡のソフトバンクまで移動距離が長いことの影響もあるかもしれない。

 主催ゲームではパ・リーグ1の観客動員を誇るソフトバンクが、ロードでの動員数が最下位なのが目を引く。他のチームには福岡での試合の数字が乗っているとしても、これは驚きの結果だ。

 今のNPB球団のマーケティングは、ダイエーホークス時代の球団社長だった故高塚猛氏が、男性・高齢者中心だったプロ野球の客層を、女性・若年層へとシフトし、「試合に集中するのではなく、スタジアムで楽しむ」ことをコンセプトにしたのが始まりだとされる。パイオニアだけあってソフトバンクは地元での動員は大きいが、全国区までは手が回っていないのだろう。

【次ページ】 地元密着は成功しているが、それ以外の地域は野球離れ。

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