酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
プロ野球、最多観客動員の裏で……。
「野球離れ」を裏付ける恐怖の数字。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/01/26 11:30
広島カープは真っ赤に染まるマツダスタジアムのイメージが強いが、ビジターでの集客力も最強なのだ。
地元密着は成功しているが、それ以外の地域は野球離れ。
最後に、気になる数字を出す。
2017年、NPBの公式戦のうち地方球場で行われた試合は35試合、合計で観客動員は53万6387人、動員率は65.9%に過ぎなかった。
2014年は地方球場で42試合が行われ、観客動員は67万7345人、動員率は69.1%だった。
地方での試合は数も減り、動員数も動員率も減っている。ロッテやDeNA(2018年は1試合開催予定)のように、地方での試合をやめてしまった球団もある。
昔は年に1度のプロ野球を楽しみに、地方球場には鈴なりのファンが駆け付けたが、今はプロ野球チームがない地方では、野球人気はさっぱりなのだ。
今のプロ野球は、本拠地のある狭いエリアで濃厚なマーケティングを行っている。おかげで観客動員は伸びているが、その多くは近くに住むリピーターだ。1人のファンが3回、4回と球場に足を運ぶことで、史上最多の観客動員になった。
一方、地方では地上波での野球中継がなくなったこともあり、プロ野球への関心は薄れている。年に1回の公式戦でさえ、満員にはならない。
先日、DeNAの筒香嘉智が「野球離れ」に対して危機感を表明した。現役選手としては、勇気ある発言だった。史上最多の観客動員の裏側で、「野球離れ」は確実に進行している。
地方球場でのプロ野球興行の衰退も、「野球離れ」の一現象だ。
プロ野球関係者は、目の前の数字に安心するのではなく、本当はどうなのか、を真剣に見つめる必要があるだろう。