Jをめぐる冒険BACK NUMBER
東京V・井上潮音が生まれ変わった。
技術の男が感じた「戦える選手に」。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byGetty Images
posted2018/01/23 17:30
テクニシャンタイプの井上潮音が強さを身につけたら……。自分に足りないところを発見できるのも国際大会の魅力の1つだ。
怪我、スタミナ不足というイメージから一転。
井上の懸命なアピールは、指揮官にたしかに届いた。
M-150カップ決勝のウズベキスタン戦でもスタメンに指名されると、U-23アジア選手権のメンバーにも選出されたばかりか、中2日の試合間隔で行われたパレスチナとの初戦とタイとの2戦目に連続してフル出場を果たすのだ。
それは、二度の長期離脱に苦しみ、先発出場してもスタミナ不足を露呈した、ほんの数か月前には考えられないことだった。
「自分でも驚いています。体のケアや睡眠といった基本的なことをイチから見つめ直して準備しているのが、この2試合フルでやれている理由かなと思います。運動量を多くしようとか、守備のところで連続してやろうっていうことも意識しているんですけど、上手くいっているので自信になっているし、これを続けていくのが大事かなって」
「危険なプレーをしなきゃ点は入らない」
変化は、オフザピッチ、オフザボールにとどまらない。本来の持ち味であるオンザピッチ、オンザボールにおいても変化が生まれている。その変化を生んだのは、得点やアシストといった目に見える結果に対する強い意欲だ。
タイとの第2戦、ゴールレスドローが近づいていた後半の終了間際、セットプレーの流れから右サイドでボールを拾った井上は、ファーサイドで待つ田川亨介目掛けて迷わずクロスを放り込み、板倉滉の決勝ゴールをお膳立てした。
これまでの井上なら、ショートパスによるコンビネーションで打開を試みるようなシチュエーションだった。
「いつもの僕だったらたぶん上げていないんですけど、危険なプレーをしなきゃ点は入らないって感じたので、クロスを選びました」
ターンオーバーが採用された北朝鮮との第3戦では、自身と同じボランチに入った伊藤洋輝が二度にわたってゴール前に飛び出し、積極的にゴールを狙う姿をベンチから目の当たりにした。そのプレーに、攻撃のイマジネーションが刺激された。
「試合終盤でも前線まで行ってシュートまで持ち込んだ場面があって、あれを見て、良い選手だなって。僕はボールに関わりながら前に行く感じですけど、昨日の洋輝のプレーを見て、自分もああいうプレーを増やしていきたいなと思います」