Jをめぐる冒険BACK NUMBER
東京V・井上潮音が生まれ変わった。
技術の男が感じた「戦える選手に」。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byGetty Images
posted2018/01/23 17:30
テクニシャンタイプの井上潮音が強さを身につけたら……。自分に足りないところを発見できるのも国際大会の魅力の1つだ。
2017年は怪我でサッカーを離れた時期が長かった。
もっとも井上にとって今大会は、いや、M-150カップから続く40日間は、サッカー選手としての幸福を改めて味わうことのできた時間だった。
プロ2年目の2017年シーズン、井上はJ2の東京ヴェルディでわずか11試合の出場、それもフル出場は1試合に留まった。
開幕戦から5試合連続してピッチに立ったが、3月末に左足太ももの肉離れを起こすと、6月に復帰した直後にも再び同じ箇所を負傷した。ようやく戦列に戻ってきたのは、シーズン終了間際だった。
「90分フル出場するとか、シーズンを通して試合に出続けることの難しさを痛感したシーズンでしたね」
10月末に途中出場を果たし、最終節で37試合ぶりにスタメンに名を連ねた井上に、シーズン終了後の11月末、森保ジャパンの初陣となるM-150カップのメンバー選出の報せが届く。
初先発となった北朝鮮との第2戦でゴールという結果を残したあと、さわやかな笑顔を浮かべながら、こう語っていた。
「代表に選ばれたのはうれしかったです。代表に生き残りたいっていう想いをこの試合で出そうと思っていて、少しは出せたのかなって思います」
「少しは」という言葉は、穏やかな性格による謙虚さからくるものか、こんなものではないというサッカー選手としてのプライドだったか。
同世代のトップランナーが不在の代表で。
しかし、話がU-20ワールドカップ出場メンバーの不在に及んだとき、さわやかな笑顔に隠された負けず嫌いの虫が顔を覗かせた。M-150カップには、東京五輪世代のトップランナーとも言うべき、昨年5月のU-20ワールドカップに出場した選手たちが、誰ひとりとして選ばれていなかったのだ。
「入ってないな、っていうのはすぐに思いましたね。まずは生き残って一緒にやれるようにアピールしたいです。でも、そんなに負けているつもりはないので、自分の良さを出して、彼らに少しでも食い込んでいきたいと思います」