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F1の魅力は究極の駆けっこなのに。
PU新ルールに各方面から不評の声。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2018/01/14 07:00
2017年のマクラーレン・ホンダは、名手アロンソにして、完走扱いを含めれば10回リタイアという信頼性の低さだった。
使用制限を設けたことでレースのペースが落ちる。
レースの本質は、スタートして最初にチェッカーフラッグを受けたドライバーが勝者となる、自動車という道具を使用した究極の「駆けっこ」である。レース毎に、入賞したドライバーにポイントが与えられ、その合計ポイントが最も高かった者がチャンピオンとなる。
ところがパワーユニットに年間使用基数制限を設けると、チームはペナルティを受けないため、パワーユニットの使用を必要最小限にとどめるようになる。
現在のF1では、レースの情勢が見えてきた終盤になると、ドライバーがパワーユニットを労ってペースを落とすことは珍しくない。
中には戦略的に自らリタイアするケースもある。これでは、レースがエキサイティングでなくなるのも当然だ。
ハミルトンも「エンジン音が体中に響いていたのに」。
このような状況を危惧しているのは、ルノーやホンダだけではない。実は昨年のチャンピオンであるルイス・ハミルトンも警鐘を鳴らしている。
「F1は2018年から3基ルールを適用するけど、僕はこのアイデアは好きじゃない。というか、最悪だ。F1は世界最高峰のモータースポーツ。だったら、限界まで走るべき。でも、最近はパワーユニットのことを必要以上にケアしてレースしている。
僕が初めて生でF1を観戦したのは1996年のベルギーGPだけど、僕はいまでもあのときの感動を忘れていない。目の前をミハエル(・シューマッハ)のマシンが全開で駆け抜けていった。エンジン音が僕の体中に響いていた。いまのF1にはそれがない。今年、さらに静かなマシンを見せることになるなんて、悲しいね」