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“早大三羽烏”斎藤、大石、福井。
プロ初キャンプの見どころはどこか?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKYODO
posted2011/01/28 10:30
梨田昌孝監督曰く、斎藤選手のプロデビューは最短で「東京ドームの2つ目か3つ目」になるという。3月29日からの東京ドーム3連戦(対オリックス)でのデビューなるか?
球速アップのために斎藤はどんな投げ込みをするのか?
斎藤の大学4年間の9イニングあたりの奪三振数、いわゆる「K/9」の数値は、7.83にしか過ぎない。大石がリリーフとはいえ12.6、福井が9.48をマークしていることを思えば、やはりストレートの差がこの数字には反映されている気がする。
個人的に注目しているのは、斎藤がキャンプでどれだけ投げ込むかということだ。
アメリカのキャンプでは、若手投手には投球数を減らす代わりに、思いっきり投げ込むことを奨励するコーチがいる。腕、肩への負担は大きいものの、全力で投げることを体が覚え、それが球速アップにつながっていくという考え方があるのだ。
斎藤はシーズンを通してのスタミナづくりという意味で、しっかりと投球数をこなしていくだろうが、日によっては球速のアップをテーマにブルペンに入ることも考えられる。
だから斎藤の場合、キャンプでは投球数と球速が注目すべきポイントとなるのだ。
3人の中でもっとも困難な課題を突きつけられている大石。
若手の右投手の育成には定評のある西武。渡辺久信監督は大石を先発で起用していく方針だという。
実は3人のなかでプロに対するアジャストメント、適応力がもっとも求められているのは大石だろう。
早稲田では4年間で60試合に登板しているが、先発での登板は3試合だけ。斎藤、福井がいたために大石が抑えに回らざるを得ず、このあたりは不運だったとしか言いようがない。現在、報道では「スタミナに課題」と言われているが、抑えから先発への転向でむずかしいのは「球種」である。
抑え役は、先発に比べて球種が少なくても仕事が出来る。昨季、オリオールズのクローザーを務めた上原浩治はストレートとフォークの2つの球種でバンバン三振を取っていった。全力で投げられるし、相手打者との対戦回数も限られているから、球種が少なくても大丈夫なのである。
それは大学時代の大石にも言えた。150kmを超えるストレートとフォークだけで三振を取ることが出来たのである。
しかしプロの先発ではそうはいかない。実用性が高く、信頼できる変化球を少なくともあとひとつは持ちたい。スライダーはプロレベルではまだ信頼性が高いとは言い切れないので、大石の場合はキャンプで変化球がどれだけ有効な武器になるか注目していきたい。
プロの世界でも、新しい球種の習得には(自信を持って投げられるまで、という意味で)、少なくとも1年以上の歳月は必要と言われている。ひょっとしたら大石が新しい球種に挑む可能性もあり、そのあたりを楽しみにしたいと思う。