野球善哉BACK NUMBER
大谷翔平を育てたのは日本ハムだけ?
高校や育成クラブの貢献に報酬を。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNanae Suzuki
posted2018/01/05 10:30
リトルリーグ、リトルシニア、そして花巻東高校を経て日本ハムに入団した大谷翔平。プロに送りこんだ彼らの貢献に報いたい。
ドラフト時に、育成チームへの謝礼があってもよい。
ある高校野球部の監督が興味深い話をしていた。
「昔はドラフトで入団が決まったりすると、その球団側から『学校にボールを送っといたよ』と小量ですけど、お礼代わりにもらったことがありました。部活動をする側からすると、ボールは1ダースもらうだけでも全然、違うじゃないですか。
でも今は、プロ側から何かをもらえば『違反だ』と言われて、スカウトはあいさつに来る際に、菓子折さえも持ってくることができない。うちのサッカー部もプロを出しているのでそうしたお金のことを知りましたが、サッカー界はいいルールがあるなって思います」
日本球界が育てた金の卵がメジャーに移籍する時に、プロ球団だけが譲渡金を受け取るのではなく、何とかアマチュア側にも還元できるようなシステムができてくれないかと願う。
MLBだけが支払うというのも妙な話で、NPBの各球団がドラフトの際に、育成貢献金のようなお金を支払うべきだろう。当然、公な形で。
野球の普及を支えるアマチュア組織を支えるために。
オフシーズンになると、プロ野球選手が全国各地に飛び、野球教室に参加している。
競技人口の衰退を目の当たりにして、選手たちの目の色が変わりつつあると感じるが、そうしたイベントにもやはり費用がかかる。すべての地区で開催できるわけではない。
後にプロ野球選手になる選手を育てたチーム(あるいは所属団体)に育成貢献金が多少でも入れば、そうしたイベントの費用の足しにもなるだろう。アマチュア野球の組織はほとんどがボランティアで活動しており、もしそこに使える資金があれば、野球の普及のためにとれる可能性は広がるはずだ。
大谷のようなスーパースターを送り出すと同時に、次なるスーパースターを育てる環境を整備する。
「野球界の空洞化」を嘆くよりも、野球界が1つになってできることがあるはずだ。