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大谷翔平を育てたのは日本ハムだけ?
高校や育成クラブの貢献に報酬を。
posted2018/01/05 10:30
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Nanae Suzuki
エンゼルスへの入団が決まった大谷翔平が、札幌ドームで一般公開の記者会見を行った。
北海道で育ち、世界の舞台へ羽ばたいていく大谷のために、球団が設定したファンへ向けての公式記者会見で、2012年にレンジャーズへ移籍したダルビッシュ有投手に続くものだ。
日本の若者が世界へ巣立っていく光景には感慨深いものがあるが、今回の大谷のメジャー移籍には、これまでの日本人選手同様、大きな意味を持っている。
球界の大御所の中には「日本野球の空洞化だ」とメジャー挑戦を嘆く方もいるが、大谷のようなスーパースターがメジャーに移籍したことを、日本野球界の中にどう財産として生かすかの方が重要だ。
大谷はポスティングシステムを利用して移籍したが、こうしたルールも、球界の発展のために利用することを考えていくべきだろう。
大谷を育てたのは日本ハムだけではない。
現在のルールでNPB所属の選手がMLBに挑戦するには、9シーズンの出場選手登録日数を超過した選手に与えられる海外FA権を取得するか、ポスティングシステムを利用するしかない。
日本のFA制度では、国内移籍の際は金銭やトレードなどの補償が発生するのに、海外移籍だとそれが発生しない。そのため、球団が育てあげた選手が移籍する際に、対価が得られない状況だ。
そうであるならば、早期のメジャー挑戦を求める選手については、ポスティングシステムを利用して対価を得たほうがいいと球団が考えるのは自然なことだ。
このポスティングシステムについては、2013年ごろから上限金額の変更などが続き、現在は、毎年ルールの更新が検討されている。印象としては、MLB側に好きなように操られているようにも見えるが、日本側も野球界全体が活性化するためのシステムを提案していくべきだろう。
たとえば今回の大谷のポスティング移籍を例にとれば、エンゼルスから日本ハムに譲渡金が入ることになっているが、「大谷を育てた」という観点でそれをアマチュアにも還元できるような仕組みができないだろうか。