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大谷翔平を育てたのは日本ハムだけ?
高校や育成クラブの貢献に報酬を。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNanae Suzuki
posted2018/01/05 10:30
リトルリーグ、リトルシニア、そして花巻東高校を経て日本ハムに入団した大谷翔平。プロに送りこんだ彼らの貢献に報いたい。
サッカー界には、選手を育てたことへの報酬が存在する。
こんなことを思ったのは、サッカー界にはそういったルールが存在しているからだ。
トレーニング・コンペンセーションや、連帯貢献金といったものだ。
トレーニング・コンペンセーションとは、アマチュアの選手がプロ契約をする際に、当該選手が所属した団体に、在籍年数にのっとった金額が支払われ、23歳以下で国際移籍をする際にも、12歳~21歳までに所属していたクラブに支払われる制度のことだ。
連帯貢献金とは、移籍金の一部を分配するという制度で、こちらは12~23歳まで所属したクラブに支払われる。これらはFIFAが設定した国際ルールだ。
いわばサッカー界の考え方として、選手を育成したクラブの「サッカー界への貢献」について、報いる必要があるということだ。
高野連をはじめとする日本のアマチュア野球界にこの制度の話を持っていけば、「学生をお金儲けに利用できない」と却下されてしまいそうだが、選手を育てたクラブや学校に対して、育成に対する貢献金が与えられることは、決して「お金儲け」ではない。
選手を育てるためのクラブづくりというのは、一筋縄ではいかない。まして昨今は、野球の競技人口減少がささやかれ、いっそう指導の質を高めていく必要がある状況だ。選手を育てあげて球界に貢献したことにたいして、さらなる育成環境の整備を目的とした資金が支払われることに、きな臭さはないはずだ。
育成の報酬があれば、使い潰す指導者も減る。
「日本学生野球憲章」の規定により対価を得ることができないというのであれば、そうした資金を高校に与えるのではなく、所属の野球連盟などに支払う形にする方法もある。
あるいは「日本野球界育成基金」として資金を管理する団体を作れば、高校野球界にもプラスの影響がある。
たとえば甲子園の過密日程が叫ばれて久しいが、宿泊費などの負担をこうした基金から捻出するのもひとつの手だろう。
また、「育成に対する報酬がある」ことを野球界に関わる人が念頭に入れることで、投手の登板過多などに対する考え方も自然に変わってくるだろう。将来を見据えた教育という観点に立つ指導者が増えれば、球界の活性化にもつながる。