Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER
惨敗の日本男子バレー変革に挑む。
名コーチ・ブランの覚悟と指導法。
posted2017/12/28 08:00
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Ayumi Yamamoto
全日本男子バレーのコーチに就任した。
9月のグラチャンバレーでは強豪相手に惨敗も、
改革の歩みを止めることはない。
Number936号(2017年9月28日発売)の特集を全文掲載します!
日の丸を胸に、母国の国歌を聞く。
選手として、指導者として4度目の五輪となる東京オリンピックへ向けたスタート。
バレーボール全日本男子コーチ、フィリップ・ブランは静かな口調で言った。
「(パリで開催される)2024年のオリンピックがフランス人にとって特別であるように、2020年の東京オリンピックは日本人にとって、特別な大会になる。もちろん、私自身にもね」
9月12日から17日まで開催された、バレーボールのワールドグランドチャンピオンズカップ(グラチャンバレー)。大会2日目には日本とフランスが対戦した。若手主体とはいえ、今夏のワールドリーグを制したフランスの前に、日本は0-3とストレート負けを喫した。
情熱豊かなフィリップが欧州スタイルを吹き込む。
力及ばず、と言うにはあまりにもお粗末な内容に、ブランの表情も曇る。だが、現役時代、ブランがMVPを獲得した1986年の世界選手権と'88年のソウルオリンピックで共にプレーし、現在フランス代表監督を務めるロラン・ティリは笑みを浮かべ、こう言った。
「日本はディフェンスがいいし速さもある。年々進化しているチームにフィリップが入って来たことによって、ヨーロッパスタイルが吹き込まれ、チームのプレーもより効果的になるのではないでしょうか。彼は選手として優秀だっただけでなく、ワインも、食べることも好き。生きること自体を楽しむ、情熱豊かな方です。きっと、日本でもいい経験をされることでしょう」
今年5月に来日し、中垣内祐一監督不在のワールドリーグスロバキア大会では監督代行として指揮を執った。以後、練習メニューを説明する際も、試合中のタイムアウトやセット間、いつも輪の中心にはブランがいる。
「通訳が入る分、伝える難しさはあります。でも顔を見ればわかっているのか、理解していないのかは誰でもわかる。日本人だから、外国人だから、というのではなく、それは万国共通です」
日々の練習中も、気になることがあれば個別に声をかけるだけでなく、全体に向けて、なぜその選択をしたのか、チームで共有して理解をさせる。